
皮膚に何かが触れた後に赤くなったり、かゆみが出たりする「かぶれ」の症状は、「接触性皮膚炎」と呼ばれる皮膚トラブルの一種です。原因となる物質は化粧品やアクセサリー、衣類の素材などさまざまで、気づかないうちに症状を悪化させてしまうこともあります。
本記事では、接触性皮膚炎(かぶれ)の原因や症状を詳しく解説し、悪化を防ぐための対処法や予防策を紹介します。適切なケアを知って、肌トラブルを最小限に抑えましょう。
1.接触性皮膚炎(かぶれ)とは?
接触性皮膚炎(かぶれ)とは、特定の物質に皮膚が触れることで炎症を起こす皮膚トラブルの一種です。症状の程度はさまざまで、軽いかゆみや赤みから、水ぶくれや腫れを伴う重いものまであります。
基本的には原因物質が触れた部分に症状が現れますが、体質や刺激の強さによっては広範囲に及ぶこともあります。
接触性皮膚炎の症状

接触性皮膚炎(かぶれ)の症状は、刺激の強さや持続時間により異なり、軽度から重度まで段階的に進行することがあります。
●初期症状(軽度)
- 皮膚が赤くなり、軽いかゆみやヒリヒリ感が生じる。
- チクチクとした刺激やムズムズする違和感がある。
- 皮膚が乾燥してざらつくこともある。
●中等度の症状(炎症が進行)
- 赤みやかゆみが強くなり、皮膚が腫れる。。
- 小さな水ぶくれができることがある。
- 炎症が進むと水ぶくれが破れ、じゅくじゅくとした浸出液が出ることも。
●重度の症状(長引く・慢性化)
- 皮膚がただれてかさぶたができる。
- 繰り返し炎症を起こすことで皮膚が厚くごわつく。
- 炎症後に色素沈着や色抜けが起こることがある。
接触性皮膚炎の種類
接触性皮膚炎(かぶれ)には、大きく分けて「刺激性接触皮膚炎」「アレルギー性接触皮膚炎」「光接触皮膚炎」の3種類があります。
●刺激性接触皮膚炎
刺激性接触皮膚炎は、強い化学物質や物理的な刺激が皮膚に触れることで発生する炎症です。洗剤や漂白剤などの化学薬品、長時間の水仕事、摩擦などが原因となることがあります。
このタイプの皮膚炎は、アレルギー反応を伴わず、刺激の強さや接触時間によって誰にでも起こる可能性があります。
●アレルギー性接触皮膚炎
アレルギー性接触皮膚炎は、特定の物質(アレルゲン)に対して免疫反応が過剰に働くことで発生します。アレルゲンとなる物質には、金属(ニッケルなど)、ラテックス、化粧品の成分、植物の樹液などがあり、体質によって反応の有無が異なります。
一度アレルギー反応を起こすと、同じ物質に触れるたびに炎症が発生するため、原因物質を特定し避けることが重要です。
●光接触皮膚炎
光接触皮膚炎は、特定の物質が皮膚に付着した後に紫外線を浴びることで発生する皮膚炎です。普段は無害な物質であっても、紫外線の影響を受けると化学変化を起こし、皮膚に炎症を引き起こすことがあります。
原因となる物質には、一部の薬剤、香料、植物の成分(セリ科の植物など)が含まれます。紫外線対策や適切なスキンケアで予防することが大切です。
2.接触性皮膚炎(かぶれ)の主な原因

接触性皮膚炎(かぶれ)は、日常生活でさまざまな物質に触れることにより発症します。
普段使っている化粧品や洗剤、アクセサリーなど、意外なものが肌に刺激を与えていることも。また、職業柄、特定の物質に頻繁に触れていることで発症するケースも少なくありません。
日常生活でよくある原因
①化粧品やスキンケア用品
ファンデーションや日焼け止めなどの成分が肌に合わず、炎症を引き起こすことがあります。化粧品に含まれる香料や防腐剤、アルコールが刺激になることも。目元のアイテム(まつ毛エクステ接着剤や点眼薬)にも注意が必要です。
②洗剤や柔軟剤
食器用洗剤や洗濯洗剤、柔軟剤に含まれる界面活性剤や香料が、肌に刺激を与えることがあります。手荒れが繰り返し起こる場合は、使用している洗剤が原因の可能性も。
③金属(アクセサリー、ベルトのバックルなど)
ピアスやネックレス、時計などに含まれるニッケルやクロムがアレルギーを引き起こし、炎症を起こすことがあります。特に汗をかくと金属が溶け出しやすく、症状が悪化することもあります。
④ゴム・ラテックス(手袋、ゴムバンドなど)
ゴム手袋や靴下のゴム部分など、長時間肌に触れるものがかぶれの原因になることがあります。ラテックスにアレルギー反応を示す人もいるため、注意が必要です。
⑤植物(ウルシ、イチョウなど)
ウルシやイチョウ、マンゴーの皮などに触れると、時間が経ってから赤みやかゆみが出ることがあります。肌が露出した状態で庭仕事をしたり、アウトドアを楽しんだりした際に発症しやすくなります。
⑥外用薬や湿布
市販薬や湿布の成分が肌に合わず、かぶれることがあります。特に湿布は長時間貼ることで肌に負担がかかり、剥がした後に紫外線を浴びると症状が悪化することもあります。
職場や環境による原因

①美容師・飲食業
美容師はシャンプー剤やパーマ液、カラー剤に頻繁に触れるため、手荒れを起こしやすい職業です。また、飲食業では手洗いや消毒を頻繁に行うため、アルコールや洗剤による手荒れが起こりやすくなります。
②医療従事者
医療現場ではゴム手袋(ラテックス)を使用する機会が多く、長時間着用することで蒸れてかぶれることがあります。また、ゴム手袋の素材そのものがアレルギーを引き起こすこともあり、ラテックスアレルギーの人にとっては特に注意が必要です。
③建設業
建築現場で使用される塗料・接着剤・防腐剤などには、有機溶剤や化学物質が含まれており、皮膚に刺激を与えることがあります。また、鉄・アルミ・ニッケルなどの金属粉に触れる機会が多く、金属アレルギーを持つ人はかぶれやすいと言えます。
3.接触性皮膚炎(かぶれ)の対処法

かぶれが起こった場合、できるだけ早く適切な対処をすることが大切です。症状が悪化しないよう、まずは原因となる物質を取り除き、肌への刺激を最小限に抑えましょう。
かぶれたらすぐにやるべきこと
①原因となる物質に直接触れない
かぶれの原因となった可能性のある物質には、なるべく素手で触れないようにしましょう。炎症が起きている肌に刺激を与えると、症状が悪化する恐れがあります。
②原因となる物質を洗い流す
皮膚に付着した原因物質を取り除くため、ぬるま湯と低刺激の石けんを使ってやさしく洗い流しましょう。ゴシゴシこすらず、泡で包み込むように洗うのがポイントです。洗ったあとは、タオルで押さえるようにして水分を拭き取りましょう。炎症が起きている部分はデリケートな状態になっているため、摩擦を避けることが重要です。
③患部を冷やす
かゆみや炎症を和らげるために、冷たいタオルや保冷剤をタオルで包んで患部に優しく当てると効果的です。ただし、冷やしすぎると刺激になることもあるため、様子を見ながら行いましょう。
症状が軽い場合は市販薬での対処も
症状が軽度で、原因が明確な場合は市販薬を活用するのも一つの方法です。
●ステロイド外用薬(塗り薬)
ステロイドには炎症を抑える作用があり、赤みやかゆみが強い場合に効果的です。ステロイド外用薬は種類によって効き目の強さが異なるため、薬剤師に相談して適切な薬を選ぶことをおすすめします。
●抗ヒスタミン薬(飲み薬)
かゆみがひどい場合は、抗ヒスタミン薬を服用することで症状を和らげることができます。かゆみを抑えることで掻き壊しを防ぎ、症状の悪化を防ぐ効果が期待できます。
病院を受診したほうがよいケースは?
以下のような症状がある場合は、市販薬での対応が難しいため、早めに皮膚科を受診しましょう。
- かゆみや赤みが強く、広範囲に広がっている
- 水ぶくれができたり、ジュクジュクしている
- 腫れがひどく、痛みを伴う
- 市販薬を数日使っても改善しない、または悪化した
- 原因が分からず、繰り返しかぶれている
かぶれは放置すると悪化しやすく、長引くこともあります。症状が強い場合や繰り返す場合は、適切な治療を受けることで早期回復につながります。
4.接触性皮膚炎(かぶれ)を予防する方法
接触性皮膚炎(かぶれ)を防ぐためには、日常生活の中で肌への刺激を減らし、適切なスキンケアや環境対策を行うことが大切です。特に、肌が敏感な人は、日頃から原因となる物質を避ける工夫をしましょう。
スキンケアでの対策

●低刺激の化粧品やボディソープを選ぶ
化粧品やスキンケア用品は、アルコール・香料・防腐剤などの刺激が少ないものを選びましょう。成分によっては肌に負担をかけ、炎症を引き起こすことがあります。「敏感肌用」「低刺激」と表示されたものや、成分がシンプルなものを選ぶと安心です。
●新しい化粧品はパッチテストを行う
初めて使う化粧品は、腕の内側など目立たない部分に少量塗り、24時間後に赤みやかゆみが出ないか確認しましょう。肌に合わない成分が含まれている場合、軽いかぶれが出ることがあるため、事前にチェックしておくことが重要です。
●過度なスキンケアを避ける
洗顔やクレンジングでゴシゴシこすったり、頻繁にスクラブを使用したりすると、肌のバリア機能が低下し、刺激を受けやすくなります。優しく洗い、しっかり保湿をすることで、肌を守りながら健康な状態を維持しましょう。
日常生活でできる対策
●ゴム手袋を使うときは、内側に綿手袋をつける
ゴムやラテックスに含まれる成分が原因でかぶれることがあるため、直接肌に触れないよう、綿手袋を内側に着用するのがおすすめです。特に長時間手袋を使う場合は、汗や蒸れによる刺激を防ぐためにも有効です。
●アクセサリーは金属アレルギー対応のものを選ぶ
ニッケルやクロムなどの金属はアレルギーを引き起こしやすいため、アクセサリーを選ぶ際は「ニッケルフリー」「チタン製」「ステンレス製」などのアレルギー対応のものを選びましょう。
●湿布や外用薬は長時間貼りっぱなしにしない
湿布を長時間貼ったままにすると、かぶれの原因になることがあります。また、湿布を剥がした後は肌が敏感になっているため、紫外線を浴びることで炎症が悪化することも。湿布を使用した後は、日焼け止めを塗ったり、衣類で覆ったりして紫外線対策をしましょう。
●紫外線対策をおこなう
日光によってかぶれが悪化するケースもあるため、帽子や日傘、UVカットの衣類などを活用し、紫外線から肌を守りましょう。特に光接触皮膚炎を引き起こしやすい人は、紫外線を浴びる時間を減らすことが大切です。
アレルギー検査の活用
●原因物質を特定するために皮膚科でパッチテストを受ける
何が肌に刺激を与えているのかを知るためには、皮膚科でのパッチテストが有効です。原因となる物質が特定できれば、日常生活での予防もしやすくなります。
●職場や生活環境に合わせた予防策を立てる
仕事で特定の化学物質や金属を扱う場合、代替品の使用を検討するのも一つの方法です。例えば、医療従事者の場合は、ラテックスアレルギーのリスクを考慮し、ニトリル製やビニール製の手袋を選ぶ、金属に触れる機会が多い人はコーティングされた道具を使うなど、環境に応じた対策を取り入れましょう。
5.接触性皮膚炎(かぶれ)は身近な皮膚トラブル
接触性皮膚炎(かぶれ)は誰にでも起こりうる皮膚トラブルですが、原因を把握し、適切に対処すれば症状を和らげることができます。ただし原因が分からない場合、もしくは痛み・腫れがひどい場合は、早めに皮膚科を受診しましょう。
日頃から低刺激のスキンケアを意識し、原因となる物質を避けることで予防も可能です。日常生活での工夫を取り入れながら、肌の健康を守りましょう。