情報掲載日:2025/04/10
【医師監修】ホットフラッシュとはどんな症状?更年期以外に考えられる原因や対処法を解説

更年期を迎えた女性の多くが悩まされる「ホットフラッシュ」。急なほてりや発汗、のぼせといった症状が現れ、ひどい場合は日常生活に支障をきたすこともある代表的な更年期症状です。症状の重さには個人差があるものの、少しでも症状を緩和したいという女性は少なくないでしょう。

本記事では、症状が出やすい年齢やタイミングをはじめ、ホットフラッシュが起こる原因、更年期以外に考えられる病気、症状を和らげるための対処法について詳しく解説します。

1.ホットフラッシュとは?

更年期には身体のさまざまな不調に悩まされますが、その代表的な症状がホットフラッシュです。以下のような「ほてり」「発汗」「動悸」「上半身ののぼせ」といった症状が、個人差や程度の差はあるものの1 日に何回も現れることがあります。

  • 身体がカーっと熱くなる
  • 涼しいのに汗が止まらない
  • 顔が赤くなる
  • 顔を中心に大量の汗をかく

ホットフラッシュは更年期を迎える約6割の女性が経験し、日常生活に差し障るほど重症化すると「更年期障害」と呼ばれます。症状が1回につき2~4分間ほど持続することもあれば、1時間程度の長い間悩まされることもあります。

ホットフラッシュの症状が出やすい年齢

ホットフラッシュの症状は、特に50~54歳頃に出やすく、症状も重くなりやすい傾向があります。ただし個人差があるため、55~59歳頃に症状を自覚する人もいれば、60歳以降にホットフラッシュを経験するケースも珍しくはありません。一般的に更年期は45~55歳頃に訪れ、ホットフラッシュの症状は更年期後期に現れやすいと言えます。

ホットフラッシュの症状が出やすいタイミングは?

ホットフラッシュの症状が出やすいタイミングは?

ホットフラッシュは、特定の時間帯や季節、環境によって現れるケースがあります。ホットフラッシュが起こりやすいタイミングを知り、身体の負担に備えましょう。

【時間帯】

ホットフラッシュが起こりやすいのは「朝の起床時」「日中の活動時」「夜の就寝前後」です。朝や夜は自律神経の乱れによりほてりやすく、日中の活動中は体温が上昇することで発汗が促されやすくなります。

【季節】

特に「夏」と「冬」に注意が必要です。夏は気温の上昇に伴って体温が上昇し、冬は暖房を使用する機会が増えることで、発汗しやすい状況になります。 また、湿度も影響するため、じめじめした梅雨の季節も症状が強くなる傾向があります。

【環境】

「暖房や冷房が効きすぎた部屋」は急激な温度変化により身体に負担がかかりやすくなります。そのほか、「湿度が高い」「風通しが悪い」といった場所も体温調整がうまく機能せず、ほてりを助長することがあります。


2.ホットフラッシュの原因

ホットフラッシュは、加齢により卵巣機能が低下し、女性ホルモン「エストロゲン」の分泌量が減少することで起こる症状です。

女性ホルモンは脳の視床下部からの指令を受けて分泌されていますが、視床下部の働きはそれだけではありません。体温調節や消化機能の維持、ストレス反応などもその代表的な機能で、自律神経をコントロールする重要な器官です。

更年期に入ると視床下部からの指令に反して、女性ホルモンが分泌されなくなっていきます。その機能障害は視床下部のほかの機能にも影響を及ぼし、わずかな温度変化に過敏になったり、精神的ストレスを受けやすくなったりして、血管の急激な拡張によりホットフラッシュが発生するのです。


3.ホットフラッシュを伴うその他の病気

ホットフラッシュを伴うその他の病気

一般的に、ホットフラッシュは更年期の女性に起こりやすい症状と言われていますが、病気の一症状として生じる場合もあります。のぼせやほてり、発汗以外に自覚する症状があれば、早めに病院を受診するようにしましょう。

ここでは、ホットフラッシュを伴う主な病気を紹介します。

高血圧

更年期はエストロゲンの分泌量が減るため、血管が硬くなることで血圧が上昇しやすくなります。一般的に高血圧とは140/90mmHG 以上をいい、そのまま放置すると、脳卒中や心筋梗塞などを発症するリスクも高くなります。

自律神経失調症

女性ホルモンの急激な減少は、司令部の視聴下部にも影響して自律神経が乱れやすくなります。自律神経のバランスが乱れることで、ほてりやのぼせ、手足の冷え、動悸、不眠、下痢・便秘などの症状が現れます。

甲状腺機能亢進症

甲状腺機能亢進症は、とくに20~40歳代の女性に発症頻度が高く、更年期の症状と似ているため注意が必要です。診断にはまず、血液検査で甲状腺刺激ホルモンを測定します。


4.ホットフラッシュの対処法

ホットフラッシュの対処法

ホットフラッシュをはじめとする更年期症状の改善には、日頃の生活習慣を見直すことが第一です。バランスの良い食事、適度な運動、十分な睡眠をとることを基本とし、プラスアルファとして以下のような対処法を試してみてください。

腹式呼吸をする

ホットフラッシュは交感神経が優位になることで起こるため、交感神経とは反対の働きをする副交感神経を優位にする必要があります。なかでも、腹式呼吸は副交感神経を活発にし、身体をリラックス状態にいざないます。

みぞおちの辺りに手を添えながら、鼻からゆっくり息を吸っておなかを膨らませ、鼻から吐く息でおなかをへこませる呼吸法を意識してみましょう。

アロマを活用する

アロマの香りにも副交感神経を優位にする効果が期待でき、とくにラベンダーやペパーミント、レモン、サイプレスの香りがおすすめです。

精油を垂らして使うアロマディフューザーやアロマストーンならより濃い香りを楽しめ、また、外出先ではハンカチに精油を垂らして香るだけで急なホットフラッシュの症状を緩和できることもあります。

ツボを押す

手や足には副交感神経を優位にするツボがあります。手の甲にある、親指と人差し指の骨が交わるくぼみ辺りの「合谷(こうごく)」、足は内くるぶしから指4本上にある「三陰交(さんいんこう)」を中心に押してみましょう。また、頭のてっぺんにある「百会(ひゃくえ)」のツボも効果的です。

ツボを押す時は心地よい程度の力でゆっくりと圧をかけ、より刺激したい場所は円を描くように押してみてください。


5.更年期症状を乗り越えるために意識したいこと

更年期症状を乗り越えるために意識したいこと

個人差はあるものの、更年期症状がつらいと訴える女性は多くいます。ホットフラッシュをはじめとする諸症状は身体の変化に伴って起こる不調のため、日常生活からなるべく身体に負担をかけないように心がけましょう。

例えば、ほてりや動悸で身体が締め付けられる感覚があるなら、着脱できて温度調節もしやすい服装を選んでみてください。首回りが開いた服や速乾性のある素材を選ぶ、また汗をかいた後は冷えるので、ストールなどで首回りを保温する工夫も必要です。

ほかにも、就寝中の発汗で十分な睡眠がとれない場合、背中やわきなど汗の出やすい部位にタオルやガーゼを当てておく、寝室にファンなどで湿度を下げるなど、少しの工夫をしながら更年期症状と上手に付き合うことが大切です。


6.つらいホットフラッシュは婦人科に相談を

ホットフラッシュは更年期におけるホルモンバランスの乱れから生じ、多くの女性は更年期後半に経験する症状です。ホットフラッシュの症状がつらい時は、無理のない範囲のセルフケアを心がけながら、婦人科の受診も検討してみましょう。