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健康診断で「中性脂肪が高め」「血圧が気になる」と言われたことはありませんか?そんな方に注目してほしいのが「EPA(エイコサペンタエン酸)」です。
本記事では、EPAの効果や摂取方法を分かりやすく解説します。毎日の食事にEPAを取り入れて、健康習慣を見直してみましょう。
1.注目の成分「EPA(エイコサペンタエン酸)」とは?
EPA(エイコサペンタエン酸)は、「多価不飽和脂肪酸(オメガ3脂肪酸)」の一種で、主に青魚に多く含まれている成分です。必須脂肪酸とも呼ばれ、体内では合成できないため食事やサプリメントから摂取する必要があります。
ただし、EPAは酸化しやすく、熱にも弱いという特徴を持つため加熱調理には不向きです。加熱すると過酸化脂質に変化しますが、過酸化脂質は体内に多く蓄積すると動脈硬化などの病気を引き起こす原因にもなります。そのためEPAが豊富な青魚を食べる際は、お刺身など生のまま食べるのをおすすめします。
DHA(ドコサヘキサエン酸)との違い
EPAと似た栄養素として「DHA(ドコサヘキサエン酸)」があり、この2つはどちらもオメガ3脂肪酸に分類されます。DHAは青魚のほか魚油に多く含まれ、主に脳や神経の健康をサポートする成分ですが、一方のEPAは血液の健康や炎症を抑える効果が期待されています。
2.EPAに期待できる効果
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健康に嬉しい効果が期待されるEPAですが、主に以下の4つの働きを持つとされています。
中性脂肪の生成を抑える
肝臓での中性脂肪の生成を抑えるとともに、血中の中性脂肪を効率的に分解する作用があり、肥満や糖尿病、脂質異常症などの生活習慣の予防につながります。
血液をサラサラに
EPAには血管を拡張する作用があり、血液の流れをスムーズにします。これによって心血管系のリスクが減少し、脳卒中や狭心症などの疾患を予防するのに適しています。
抗炎症作用
EPAは体内で抗炎症作用を持つエイコサノイド(ホルモン様物質)を生成します。これにより体の炎症反応が調整され、慢性的な炎症やアレルギーを抑えることができます。
脳や精神への影響
最近の研究で、EPAには脳内の神経伝達物質のバランスを調整し、うつ病の軽減やストレスへの抵抗力を高める働きを持つことが示されています。
3.EPAを含むn-3系脂肪酸の1日の摂取目安量は?
厚生労働省による「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、EPAやDHAのほかα-リノレン酸を含む「n-3系脂肪酸」の1日の摂取目安量が発表されています。
年齢 | 男性の摂取目安量 | 女性の摂取目安量 |
---|---|---|
18~29歳 | 2.2g | 1.7g |
30~49歳 | 2.2g | 1.7g |
50~64歳 | 2.3g | 1.9g |
65歳~74歳 | 2.3g | 2.0g |
75歳以上 | 2.3g | 2.0g |
出典:厚生労働省「 『日本人の食事摂取基準(2025年版)』策定検討会報告書 」
数値だけではイメージが湧きづらいかもしれませんが、例えばビンナガマグロを使った水煮タイプのツナ缶で考えると、DHA・EPAの含有量は可食部100gあたり440mg程度です。つまり、1日の摂取目安量が2.2gの18~29歳男性であれば、100gのツナ缶を5缶分摂取する必要があります。
このように聞くと、食事だけで1日の摂取量を補うのは難しいと感じる方も多いでしょう。そんな方は、ぜひ次に紹介する「EPAのおすすめの取り方」を参考にしてみてください。
4.EPAのおすすめの取り入れ方
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EPA(エイコサペンタエン酸)は体内で少量しか生成されないため、基本的には食事やサプリメントから摂取する必要があります。ここでは、EPAを効率よく摂取できるおすすめの3つの方法をご紹介します。
魚からEPAを取り入れる
EPAは主に青魚に多く含まれ、とくにサケやサバ、サンマ、ブリ、イワシはおいしく食べられて豊富なEPAを摂取することができます。可食部100gあたりのEPA含有量は、それぞれ下表の通りです。
シロサケ・すじこ | 2,100mg |
サバ類・加工品・開き干し | 1,500mg |
サンマ・皮つき(焼) | 1,300mg |
ブリ・成魚(生) | 940mg |
マイワシ(生) | 780mg |
出典:水産庁「 令和4年度 水産白書 参考図表 」
ただし、EPAは脂に多く含まれるため、食べ過ぎるとカロリ-も高くなります。食べられるだけ食べればよいというわけでなく、各魚の目安量を参考に毎日の食事に取り入れましょう。
また、青魚を選ぶ際は、脂が豊富にのった季節が旬の魚を選ぶのがおすすめです。鮮度の高いものを意識して選ぶようにするとEPAをより効率よく摂取できるでしょう。
サプリメントでEPAを取り入れる
魚が苦手な方はサプリメントで取り入れるのもおすすめです。また、毎日の食事でEPAの必要量を補うのが難しい場合、食事にプラスしてサプリメントを取り入れてみてください。ただし、サプリメントの中にはEPAの含有量が少ない製品もあるため、先に紹介した目安摂取量を補える分の含有量か確認するようにしましょう。
α-リノレン酸を含む食品からEPAを取り入れる
α-リノレン酸とは必須脂肪酸の一種で、アマニ油やえごま油、チアシードなどの食品に多く含まれています。体内に摂り入れられたα-リノレン酸の一部はDHAやEPAに変換されるため、積極的に摂取することでEPAの摂取量を増やすことができます。
ただし、摂取したα-リノレン酸がすべてDHAやEPAに変換されるわけではないため、あくまで補助的に摂り入れるようにしましょう。
5.EPAを摂取するポイント
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EPAは摂取方法を工夫することで、より質の高い状態で体の中に取り込むことができます。最後は、EPAの摂取で意識したいポイントを2つご紹介します。
調理方法を工夫する
EPAは熱や酸化に弱いという性質がありますが、適切な調理方法を選ぶことで栄養を無駄にせず摂取することができます。とくに寿司やお刺身はEPAの効果を損失させない最も効果的な食べ方で、EPAを含む魚油が失われることなくそのまま摂取できます。また、煮込み料理の場合は薄めの味付けにし、煮汁ごと食べることで栄養を逃しません。サバのオイル漬けやマリネなども保存性が高く、EPAを効果的に摂取できるでしょう。
一方、フライ料理やフライパンでの焼き調理はEPAが流出しやすくなるためおすすめできません。寿司やお刺身で食べる場合と比べ、焼き魚で約2割、揚げ物で約5割のEPAが流出すると言われています。
サプリメントの選び方
EPAをサプリメントで摂取する場合は、EPAとDHAをバランスよく含む製品を選ぶと相乗効果が期待できます。また、EPAサプリメントの選び方として以下のポイントを押さえておきましょう。
・科学的根拠に基づいて特定の機能性が担保されている「機能性表示食品」を選ぶ
・EPAは酸化しやすいため、「酸化防止剤(ビタミンEなど)」が添加された製品を選ぶ
このほか、サプリメントによって価格も形状も異なるため、自分にとって飲みやすく毎日継続できるものを見つけましょう。
6.毎日の食事にEPAを取り入れ、健康維持に役立てましょう!
EPAを効率よく摂取するためには、青魚を積極的に食事に摂り入れることが基本。魚の種類や調理方法を工夫しながら、手軽な摂取方法として缶詰やサプリメントも活用してみてください。日々の食生活に無理なく取り入れ、健康をサポートしていきましょう。