健康診断などで「血糖値が高い」と指摘された経験はありませんか? 高血糖は、糖質の多い食品の過剰摂取、運動不足などの生活習慣の乱れが原因で起こり、放っておくと動脈硬化などの病気に発展するリスクもあります。
本記事では、血糖値の基礎知識をはじめ、血糖値が高くなる原因と健康リスク、血糖値を下げるための生活習慣について詳しく解説します。
1.血糖値とは
血糖値とは、血液中に含まれるブドウ糖(グルコース)の濃度のことです。普段の食事を通して、白米やパンなどの炭水化物が体内に取り込まれると、小腸でグルコースに変換され、血液中に吸収されます。この濃度が血糖値と呼ばれ、1dL(100mL)の血液中に何mgのグルコースが含まれているかを示しています。
血糖値が高いと健康状態に問題があると判断されますが、グルコースそのものは脳をはじめ、肝臓や筋肉の働きのエネルギー源となる、人体に欠かせない重要な栄養素です。
血糖値は食事により上昇し、膵臓から「インスリン」というホルモンが分泌されることで、ある一定の数値が維持されています。血液中に正常値を超えて存在するグルコースは全身の細胞に送り込まれてエネルギーとして利用され、体内で吸収と消費を繰り返すことで、血糖値がコントロールされているのです。
血糖値の正常値
血糖値には正常値と呼ばれる範囲があり、「食後」と「空腹時」でその数値は異なります。健康診断などの際には「空腹時」で検査するのが一般的ですが、それぞれ以下の数値であれば問題ないと言われています。
食後の場合 | 食後2時間の時点で140mg/dL未満 |
空腹時の場合 | 70mg/dL以上110mg/dL未満 |
「高血糖」とされるのは上記の範囲を超えた場合です。なお、食後の血糖値が140 mg/dL以上200 mg/dL未満、空腹時の血糖値が110 mg/dL以上126 mg/dL未満の範囲は「耐糖能異常」と呼ばれ、これを超えると「糖尿病」の疑いがあります。
一方、血糖値が70 mg/dLを下回る状態を「低血糖」と言い、思考力の低下や疲労・脱力感、空腹などの症状を引き起こします。また、低血糖が進むと錯乱やけいれん発作、昏睡状態に陥ることもあるため、血糖値は常に正常値を保つことが重要です。
2.血糖値が高くなる原因は?
血糖値を上げてしまう要因として、炭水化物や糖質を多く含む食品の過剰摂取、肥満や運動不足など生活習慣の乱れ、ストレス、遺伝などが考えられます。
肥満がひとつの原因で高血糖となっている場合、過剰に増えたグルコースを消費するために、膵臓が大量のインスリンを分泌しようと頑張り過ぎる状態が続くと、やがて膵臓の機能が低下して高血糖の状態が続いてしまいます。運動不足の場合も、消費エネルギーの減少に伴い、体内のグルコースが消費されなくなることで血糖値が下がりにくくなります。
また、体にストレスがある時には高血糖を引き起こす「アドレナリン」や「コルチゾール」といったホルモンが分泌されやすかったり、遺伝的にインスリンが効きづらかったりと、高血糖の原因はさまざまあります。
血糖値が高いことによる健康リスク
長い間高血糖のままにしておくと、「糖尿病」になります。糖尿病とは、インスリンが十分に働かず、全身の細胞にグルコースを送ることができないために血液中に糖があふれてしまう病気です。
糖尿病の中でも1型と2型の2つに分類でき、2型糖尿病は遺伝的要因に加え、食べ過ぎ、運動不足、肥満などの生活習慣により引き起こされます。糖尿病を発症すると、以下のような症状が現れます。
- のどがよく渇く
- 尿の回数が増える
- 体重が減少する
- 疲れやすくなる
「糖尿病」の初期段階でよくみられる症状ですが、とくに目立った症状ではないために糖尿病になっていることに気づかないケースも少なくありません。糖尿病の疑いがある場合、血糖値は300~400 mg/dL以上など異常な高血糖になっている可能性があり、悪化すると「意識障害」を招く恐れもあります。
また、糖尿病のほかに注意したいのが「動脈硬化」です。高血糖が続くとわずかな炎症が血管の壁を傷つけ、コレステロールが蓄積しやすくなります。コレステロールが蓄積すると血管内の壁にプラークと呼ばれる塊が形成され、血管の壁が硬くなったり、狭くなったりするリスクがあります。その結果、血流が悪くなって詰まりやすくなると、心筋梗塞や脳梗塞を発症する原因になるため、高血糖を放っておくのは危険です。
3.血糖値が上がりにくくする食べ物
炭水化物や糖質を多く含む白米や麺類、果物、ジュース、お菓子は血糖値を急激に上げてしまうため、高血糖が気になる方は控えるようにしましょう。血糖値の急上昇を避けるには、「低GI(グリセミックインデックス)食品」を積極的に摂るのがおすすめです。低GI食品とは、食後の血糖値上昇が緩やかな食品のことを指します。
ここでは、血糖値が上がりにくくするために摂取したいおすすめの食材を5つ紹介します。ただし、これらの食べ物は糖尿病の治療に使えるものではないので、ご注意ください。
全粒穀物や十割そば
主食となる米やパン、麺類は、全粒穀物や小麦粉の含まれないものに置き換えてみてください。とくにパンや麺の原料である小麦粉には、血糖値を高める「アミロペクチンA」という成分を含んでいるため、なるべく避けるようにしましょう。
精白度の低い玄米や雑穀米、全粒粉パンには、ミネラルや食物繊維が豊富なのでおすすめ。食物繊維は糖の吸収を緩やかにして、血糖値の急上昇を抑える効果を期待できます。また、つなぎに小麦粉を使用していない十割そばなども積極的に選ぶようにしましょう。
青魚
良質なフィッシュオイルを摂取できるイワシやサバなどの青魚もおすすめです。
フィッシュオイルは「EPA」や「DHA」などの体に良い脂肪酸を含んでいます。「EPA」には血糖値を下げたり心血管を保護したりする働きを持つ「GLP-1」の分泌を促進する作用があり、糖尿病のリスクを減らす可能性があります。
野菜
野菜には「食物繊維」が豊富に含まれており、血糖値の上昇を緩やかにします。おすすめは、ブロッコリーや小松菜など、糖の代謝を促す「葉酸」を多く含む緑黄色野菜です。
また、ごぼうには「クロロゲン酸」という糖の吸収を穏やかにする成分を含み、調理にも向いている食材なので毎日の食事に取り入れやすいでしょう。なお、野菜でも芋類やかぼちゃ、れんこんなどは糖質を多く含むため食べ過ぎには注意が必要です。
海藻類
わかめ、こんぶ、もずくは食物繊維の一種である「アルギン酸」を豊富に含み、糖の吸収を抑えます。
海藻類は低カロリーで水分を吸収して膨らむ性質もあるため、満腹感が長時間続き、食べ過ぎの予防にもなります。
きのこ類
野菜や海藻類同様、きのこにも豊富な「食物繊維」が含まれています。また、「ビタミンB群」には糖質や脂質の代謝を促進して、脂肪の蓄積を予防する効果もあります。
とくにブナシメジにはインスリン分泌を促進する作用もあるため、普段食べ過ぎてしまうという方にもおすすめです。
4.血糖値を上げにくくする効果的な食事のとり方
血糖値を上げにくくするには食材の選び方だけでなく、食事のとり方も重要です。ここでは、食事する時に意識したい3つのポイントを紹介します。
野菜や海藻、きのこを最初に食べる
食べる順番は、食物繊維を多く含む野菜や海藻、きのこ類から摂取するようにすると、あとに食べる食材の糖の吸収を遅らせ、血糖値が急激に上がるのを防ぎます。また、食物繊維はよく噛むことで満腹感も増すので、食事の摂取量を減らしたいという方にもおすすめです。
ただし、食物繊維を摂取してから5分以上時間を置かないと、血糖値上昇の抑制に効果を発揮しません。少し時間を置いてからメイン料理を食べるようにしましょう。
ゆっくりとよく噛んで食べる
早食いをすると、満腹中枢が刺激されて満腹感を感じる前に大量に食べてしまうため、大食いの原因となります。食事する時はゆっくりと、咀嚼回数を多くすることで、血糖値の上昇を緩やかにして満腹感をもたらします。
普段早食いをしてしまうという人も、できれば15分以上かけて食事を楽しむことをおすすめします。
朝食はなるべく抜かない
朝は忙しく、朝食は抜いてしまうという人も多いと思いますが、その分昼食や間食の量が多くなることで血糖値は上昇しやすくなります。
1日を通して血糖値の上昇を抑えるためには、朝は糖質を控えめにし、たっぷりの食物繊維を摂るのがおすすめ。そうすることで、昼食時も血糖値が上がりづらくなります。
5.血糖値を下げる運動
血糖値を上げにくくする食生活と並行して、適度な運動も行うとより効果的です。運動習慣を身に付けることで、体内にある糖分の利用を促進し、血糖値を下げることができるほか、インスリンの働きも高まります。
何から始めたらいいか分からないという方は、まずは次のような運動から取り入れてみてください。
有酸素運動
週3~5日、1日30分~1時間を目安に、ややきついと感じる程度の有酸素運動を行いましょう。ウォーキングやジョギング、水泳、サイクリングなどさまざまな全身運動がありますが、無理せずできるものなら長く続けられるはずです。
筋トレ
筋肉を鍛えることで基礎代謝量やエネルギー消費量を上げ、糖の消費量を増加します。週2~3回を目安として、腹筋やスクワット、腕立て伏せなどの筋トレから始めてみてください。足腰が弱い方には水中歩行もおすすめです。ただし、筋トレは2日連続して行わないように注意しましょう。
6.血糖値を下げる生活習慣で糖尿病を予防しよう
甘いものの食べ過ぎや運動不足など、生活習慣の乱れから起こりやすい高血糖。血糖値が高いと糖尿病になり、動脈硬化などの健康リスクを高めます。
糖尿病は初期症状に気づきにくいため、定期的な検診を受けるのはもちろん、普段から規則正しい生活習慣を心がけましょう。