細菌やウイルスが付着した食べ物を摂取することで引き起こされる「食あたり」。下痢や嘔吐、腹痛などのつらい症状が現れ、重症化すると治るまでに数日間かかります。
本記事では、原因別に食あたりが治るまでの期間や、主な症状・原因を詳しく解説。さらに、自宅でできるケア方法も合わせてご紹介します。
1.食あたりとは?
食あたりは、細菌やウイルスが付着した食べ物を摂取することで引き起こされる消化器系の不調のことです。一般的に「食中毒」とも呼ばれます。主な症状として、下痢や嘔吐、腹痛、発熱などがあり、体が異物を排出しようとする反応として現れます。
食あたりは家庭内での食事だけでなく、飲食店やアウトドアでの飲食など、あらゆる場面で発生する可能性があります。軽度の食あたりは1~2日で回復しますが、中には重症化するケースもあるため、経過観察には注意が必要です。
食あたりと似た症状の他の病気との違い
潰瘍性大腸炎
大腸に炎症が生じ、下痢や腹痛、腹部の不快感などが続きます。急に症状が悪化する場合があり、食あたりと混同されることもありますが、自己免疫が原因と考えられる慢性疾患です。
アレルギー反応
特定の食品が原因で起こるアレルギー反応で、吐き気や腹痛、下痢に加え、場合によってはじんましんや呼吸困難が現れることもあります。症状の発症が早いのが特徴です。
胆石症
胆嚢にできた結石が原因となり、脂肪分の多い食事の後に強い腹痛や吐き気、消化不良が起こります。症状が持続すること、食事に関連して悪化することが特徴です。
膵炎
膵臓の炎症によって、腹痛、吐き気、消化不良を引き起こします。特にアルコールの摂取や胆石が原因で発症することが多く、食後に症状が悪化する場合もあります。
2.食あたりの原因
食あたりは、原因となる菌やウイルスによって大きく「細菌」「ウイルス」「寄生虫」の3種類に分けられます。
細菌による食あたり
細菌による食あたりは、食品や調理器具などに細菌が付着していた場合に発症します。潜伏期間は数時間から数日と、菌の種類によって異なります。
サルモネラ菌
特徴 | 鶏肉や卵に多く見られる細菌で、夏季に特に増殖しやすい |
潜伏期間 | 6~72時間 |
症状 | 発熱、腹痛、下痢、吐き気 |
予防方法 | 生肉や卵の取り扱いに注意し、中心部まで十分に加熱する |
腸管出血性大腸菌(O157)
特徴 | 加熱が不十分な牛肉などで感染しやすく、重症化する可能性あり |
潜伏期間 | 2~10日 |
症状 | 激しい腹痛、下痢(血便を伴う場合も)、発熱 |
予防方法 | 牛肉はしっかりと加熱し、衛生管理を徹底する |
黄色ブドウ球菌
特徴 | 人の皮膚や鼻腔にいる細菌で、食品が室温に放置されると増殖する |
潜伏期間 | 30分~6時間 |
症状 | 嘔吐、腹痛、下痢 |
予防方法 | 食品の長時間放置を避け、手洗いを徹底する。手袋をつけて食品に触れる |
ウェルシュ菌
特徴 | 酸素のない環境で増殖するため、大量調理での保温が不十分な際に発生する |
潜伏期間 | 6~18時間 |
症状 | 腹痛、下痢 |
予防方法 | 調理後は速やかに冷却し、再加熱する際は十分に行う |
セレウス菌
特徴 | 米飯やパスタなどのデンプンを含む食品で発生する |
潜伏期間 | 1~6時間(嘔吐型)、6~15時間(下痢型) |
症状 | 嘔吐、下痢、腹痛 |
予防方法 | 調理後は冷蔵保存し、食べる前に再加熱する |
カンピロバクター
特徴 | 生の鶏肉や牛乳に多く含まれる細菌で、少量でも感染するリスクが高い |
潜伏期間 | 2~5日 |
症状 | 発熱、腹痛、下痢 |
予防方法 | 生の鶏肉には十分な加熱を行い、調理器具の衛生管理も徹底する |
腸炎ビブリオ
特徴 | 魚介類に多く含まれる細菌で、特に夏に増殖する |
潜伏期間 | 8~24時間 |
症状 | 腹痛、下痢、嘔吐 |
予防方法 | 魚介類の生食を避け、冷蔵保存を徹底する |
ウイルスによる食あたり
ウイルスによる食あたりは、人から人への感染が起こりやすく、少量のウイルスでも感染しやすいため、集団感染を起こしやすい特徴があります。
ノロウイルス
特徴 | 感染力が非常に強く、冬季に流行しやすい |
潜伏期間 | 24~48時間 |
症状 | 嘔吐、下痢、腹痛、発熱 |
予防方法 | 手洗いを徹底し、二枚貝の加熱処理を行う。また、感染者に触れた物や食品に触れないように注意する |
ロタウイルス
特徴 | 乳幼児に多く感染し、免疫がない場合は重症化することがあり |
潜伏期間 | 1~3日 |
症状 | 嘔吐、激しい下痢、発熱 |
予防方法 | 感染予防ワクチンの接種を検討し、特に乳幼児や周囲の衛生管理を徹底する |
寄生虫による食あたり
寄生虫による食あたりは、魚介類や生の食品に寄生する虫が原因で発生します。摂取してから短時間で症状が出ることが多く、重篤なアレルギー反応を引き起こす場合もあります。
アニサキス
特徴 | サバ、イカ、タラなどの魚介類に寄生する虫で、生食により体内に侵入する |
潜伏期間 | 数時間以内 |
症状 | 激しい腹痛、吐き気、嘔吐 |
予防方法 | 魚介類は十分に加熱するか、-20℃以下で24時間以上冷凍処理を行う |
クドア
特徴 | ヒラメなどの魚に多く寄生する寄生虫で、摂取後にアレルギー症状を引き起こすことがある |
潜伏期間 | 数時間以内 |
症状 | 嘔吐、下痢、腹痛、アレルギー反応(蕁麻疹など) |
予防方法 | 生食を避け、冷凍処理または加熱を行う |
3.食あたりはどれくらいで治る?
食あたりによる症状の回復期間は、原因となる物質や症状の重さによって大きく異なります。ここでは、一般的な回復期間と原因別の治癒期間について解説します。
一般的な回復期間
食あたりによる下痢や嘔吐、腹痛などの症状や、その潜伏期間は原因によって異なります。軽症の場合、数時間から数日で回復しますが、原因によっては長期化することもあります。特に激しい症状や体力が低下している場合には、治癒までに1~2週間かかることもあります。
原因別の治癒期間の目安
原因となる「細菌」「ウイルス」「寄生虫」によって、回復にかかる時間に差があります。以下は、原因別にみた回復期間の目安です。
細菌性食中毒
細菌が原因の食あたり(サルモネラ菌、腸管出血性大腸菌など)の場合、多くは24時間から数日以内に症状が改善します。ただし、感染する細菌や症状の重さによっては、治癒に1週間以上かかることもあります。軽度であれば数日で回復しますが、症状が重い場合や症状が快方しない場合は医療機関を受診しましょう。
ウイルス性食中毒
ノロウイルスやロタウイルスが原因の場合、通常は1〜3日程度で症状が収まることが多いと言えます。しかし、ウイルス性食中毒は感染力が強く、特にノロウイルスは少量のウイルスでも人から人へと感染します。症状が改善した後も周囲への感染拡大を防ぐために、1週間は自宅で療養しましょう。
寄生虫感染
アニサキスやクドアなどの寄生虫が原因の食あたりは、治癒までに時間がかかる場合が多いです。通常は数日で症状が軽減することもありますが、体内で寄生虫が活発に活動している場合、症状が長引き、数週間続くこともあります。寄生虫感染が疑われる場合は、専門医の診断を受け、必要に応じて内視鏡による虫体の摘除や抗寄生虫薬などの投薬を行うことが推奨されます。
4.症状が続く場合の対処法
食あたりの症状が軽い場合は自宅でのケアで徐々に回復することが多いですが、症状がつらい場合は医療機関を受診するか、相談窓口で対処法を聞くこともおすすめです。適切なケアが早期回復に繋がります。
自宅でできる対処法
水分補給をする
食あたりで下痢や嘔吐が続くと脱水症状を引き起こしやすくなるため、こまめな水分補給が必要です。水だけでなく、電解質が含まれたスポーツドリンクや経口補水液を利用すると効果的です。
消化が良いものを食べる
症状が落ち着いてきたら、消化に良い食事を摂るようにしましょう。お粥やバナナ、温かいスープなどがおすすめです。脂肪分の多い食べ物や、刺激の強い食品はなるべく避けましょう。
横向きに寝る
嘔吐がある場合は、横向きで寝ると吐瀉物が喉に詰まるリスクを減らせます。また、近くにバケツやビニール袋を用意しておくと安心です。
下痢や嘔吐は我慢せず出し切る
体内にある細菌やウイルスを排出するため、下痢や嘔吐は無理に止めず出し切ることが大切です。これは、身体が異物を取り除く自然な反応であるため、下痢止めの使用は控えましょう。
自己判断で薬を飲まない
下痢止めや嘔吐を抑える薬は、体内の細菌やウイルスを排出する働きを妨げる可能性があります。また、頭痛薬や解熱剤も消化器系への負担を増やすことがあるため、自己判断での服用は避け、必要がある場合は医師に相談してから服用しましょう。
病院へ行くべきケースは?
以下の症状に該当する場合は、重篤な症状や合併症のリスクがあるため、速やかに医療機関を受診してください。
- 高齢者や乳幼児などの免疫力が弱い人
- 持病のある人
- 高熱(38.5度以上)
- 血便や黒い便
- 吐瀉物に血が混じっている
- 激しい腹痛
- 脱水症状(口渇、尿量の減少、めまい)
5.まとめ
食あたりは一般的に24時間から数日で回復しますが、原因となる細菌やウイルスの種類によっては数週間かかるケースもあります。
特に免疫力が弱っている方や持病がある方、明らかな異変を感じた場合はすみやかに医療機関を受診して治療を受けましょう。食品や調理に対しての正しい知識を持ち、日頃から食あたりを事前に防ぐ努力も大切です。