情報掲載日:2024/12/09
【医師監修】熱はないのに悪寒がするのはなぜ?原因となる病気や受診の目安を解説

悪寒とは、細菌やウイルスが体内に侵入した際に起こる免疫反応の一つで、発熱初期に起こりやすい症状です。風邪やインフルエンザが主な原因とされていますが、悪寒が長引く場合は他の病気の可能性もあります。

本記事では、悪寒が起こる原因や仕組み、寒気との違い、病院に行く目安、悪寒の対処法について詳しく解説します。

1.悪寒とは?

悪寒とは?

悪寒とは、細菌やウイルスが体内に侵入した際に起こる免疫反応のことで、発熱の初期に多く見られる症状です。悪寒を感じると、体がぞくぞくとするのが主な特徴で、体の震えや歯がガチガチ鳴るといった他の症状も伴うことがあります。このような状態を悪寒戦慄(おかんせんりつ)と呼びます。

悪寒は発熱の前兆としてだけでなく、疲労やストレス、月経や更年期に伴うホルモンバランスの変化によっても生じることがあるため、一概に病気だけが原因とは言い切れません。

悪寒が起こる仕組み

私たちの体には細菌やウイルスなどから体を守る免疫機能が備わっており、それらの病原菌が体内に侵入したときは、体温を上げて外敵から身を守ろうと働きます。

体温は通常、脳の視床下部にある体温調節中枢によって一定の温度に保たれていますが、病原体を追い出すためには体温を急激に上げて免疫機能を活性化させなければなりません。

このため、脳は体温を上げるよう指令を出します。しかし、設定された体温と実際の体温との間に差が生じ、そのギャップが悪寒として感じられるのです。

悪寒と寒気の違い

寒気は主に外気の寒さによって引き起こされる体の反応のことです。自律神経の働きにより交感神経が刺激され、血管が収縮して血流が減少することで冷たさを感じます。厚着をしたり、室内の温度を上げたりすることで症状が和らぐのがポイントです。

一方で、悪寒は免疫系の反応であり、「自己防衛」として体が自ら起こしている状態を指します。悪寒は外的な温度に関係なく発生するため、暖かい環境にいても起こります。体を温めてもなかなか治まらないことが特徴です。


2.悪寒の原因

悪寒の原因

悪寒の主な原因として挙げられるのは、風邪やインフルエンザです。これらの感染症は、体がウイルスに対抗する過程で悪寒を引き起こします。特にインフルエンザでは、急激に38~40℃の高熱とともに筋肉痛や全身のだるさを感じることが多く、その結果として強い悪寒が生じます。

また、風邪やインフルエンザだけでなく、胃腸炎、膀胱炎、肺炎などの他の感染症でも悪寒が見られることがあります。高熱、吐き気、頭痛など、他の症状を伴うケースが多いと言えます。

そのほか、甲状腺や下垂体などの内分泌器官の異常、または月経異常が体温調節に影響を及ぼすことがあります。

悪寒から考えられる病気

悪寒が起きる原因として、以下のような病気が隠れている可能性もあります。

肺炎

悪寒は肺炎の初期症状として現れることがあります。高齢者や基礎疾患のある方は免疫力の低下によって肺炎が重症化しやすいため、注意が必要です。

食中毒

食中毒は、感染性の病原体が含まれた食品を摂取することによって引き起こされます。悪寒に加え、嘔吐や下痢といった消化器症状が特徴的です。これらの症状は突然現れることが多く、体内から毒素を排出しようとする反応といえます。特に脱水症状に注意が必要で、適切な水分補給が重要です。

腎盂腎炎(じんうじんえん)

腎盂腎炎は、腎臓の感染症で、腰の痛みや排尿時の痛みが伴います。この病気では、発熱とともに悪寒が感じられることが一般的です。悪寒は、体が感染に対抗しようとしているサインです。その他、頻尿や血尿などの症状も見られることがあります。

虫垂炎

虫垂炎は、右下腹部に痛みが生じる疾患です。痛みは一般的に突然始まり、時間とともに強くなります。この痛みに伴って、悪寒が現れることがあります。虫垂炎が進行すると、発熱や吐き気、食欲不振なども見られるため、早期の医療機関への受診が重要です。

症状が悪寒だけでも病院を受診すべき?

悪寒が長引いていて、さらに悪寒以外に高熱や吐き気、倦怠感などの症状も見られる場合は、潜在的な病気が隠れている可能性があります。

風邪などの軽度な症状であればセルフケアで改善することもありますが、重い病気の場合は早期の治療が肝心です。長引く悪寒がある際は自己判断をせず、早めに医療機関を受診しましょう。


3.悪寒を和らげる対処法は?

悪寒を和らげる対処法は?

悪寒を和らげるには、いくつかの対処法があります。ここでは自宅でできる具体的な方法を詳しく説明します。

体を温めて安静にする

悪寒が起きたら、これから高熱が出る可能性があるため、まずは体を温めて安静にすることが大切です。先に説明した通り、悪寒は体を温めたからといって症状が治まるわけではありませんが、体が冷えた状態では自然治癒力が弱まり、症状が長引いてしまいます。

部屋の温度を高く設定し、湿度を50~60%に保つことで乾燥を防ぎましょう。湿度の管理は特に呼吸器系の不調がある場合に重要で、快適な環境を整えることが助けになります。さらに、厚着をしたり、温かい飲み物を摂取したりすることも効果的です。生姜や唐辛子を使用した飲み物は体を温めるだけでなく、代謝を促進する作用も期待できます。

免疫力を高めるバランスの良い食事をとる

体力を回復させるためには、ビタミンB1やB2が豊富に含まれる食品を意識的に摂取することが効果的です。

例えば、卵を使ったおかゆや煮込みうどんは、エネルギーとビタミンB2を効率的に摂取することができます。湯豆腐も、水分とビタミンB1を摂取できて胃腸にも優しいため、おすすめのメニューです。発熱時にほてりを冷ます食材としては梨がありますが、悪寒の場合は過度に体を冷やしてしまうため、悪寒が落ち着いてから食べるようにしましょう。

なお、食欲がなければ無理に食べる必要はありません。かえって胃腸にストレスを与えて逆効果となることもあるため、悪寒が治まり、食欲が回復してきたタイミングで栄養補給をしましょう。ただし、食欲がなくても水分補給だけは心がけてください。

体の状態にあった市販薬を服用する

風邪の引き始めであれば風邪薬、ストレスやホルモンバランスの変化による悪寒の場合は漢方薬など、体の状態に合わせた市販薬を選ぶことが大切です。市販薬を購入する際には、飲み方や成分に注意が必要なものもありますので、薬剤師に相談したうえで選ぶことをおすすめします。


4.まとめ

悪寒は多くの場合、ウイルスや細菌による感染症が原因と考えられますが、普段から規則正しい生活を送り、手洗いやうがいといった基本的な予防策を徹底することで、悪寒を伴う感染症を未然に防げます。ただし、悪寒が長引き、症状が改善しない場合は、なるべく早めに医療機関を受診しましょう。