基礎代謝とは、呼吸をしたり、心臓を動かしたりといった生命の維持に欠かせないエネルギーのことです。基礎代謝量は年齢とともに低下していく傾向にあり、それによって冷え性や便秘、肌荒れなどの体の不調を引き起こすこともあります。
本記事では、基礎代謝量の計算方法や性別・年齢別に必要な数値、効果的に基礎代謝を上げる方法について詳しく紹介します。
1.基礎代謝とは?
基礎代謝は人間の体で起こる3つの代謝の一つです。基礎代謝以外には、「活動代謝」と「食事誘発性熱産生」があります。「活動代謝」は体を動かすことで消費されるエネルギー、「食事誘発性熱産生」は食べ物を消化するときに使われるエネルギーです。
3種類の代謝のうち、最も多くのエネルギーを必要とするのが基礎代謝です。基礎代謝は総エネルギー消費量の約60%を占め、就寝中や座っている時などの安静時にも消費されています。私たちが意識しなくても、体は常にエネルギーを使い続けています。
基礎代謝が「いい」「悪い」とは?
基礎代謝が「いい」とは、基礎代謝が高く、カロリーを消費しやすい状態を指します。一方で、基礎代謝が「悪い」とは、基礎代謝が低く、カロリーを消費しにくい状態のことです。
代謝がいいと効率よくカロリーを消費できるだけでなく、体温が高く血の巡りがよい状態のため、体に老廃物が溜まりにくくなります。これにより、健康的な体を維持しやすくなるのです。
2.基礎代謝が下がるとどうなる?原因と影響
基礎代謝が低下すると、さまざまな体の不調を引き起こす可能性があります。その原因や影響について見ていきましょう。
基礎代謝が下がる原因
基礎代謝が下がる主な原因の一つは、筋肉量の低下です。加齢や過度な食事制限により筋肉量が減少すると、基礎代謝も落ちてしまいます。
また、暴飲暴食や運動不足などの生活習慣の乱れや、ストレスの蓄積により自律神経が乱れることも基礎代謝の低下を招きます。これらの要因が重なると、基礎代謝がさらに低下しやすくなります。
基礎代謝が下がると起こる体の変化
基礎代謝が低下すると、カロリーを消費しにくくなり、摂取した栄養素がエネルギーに変換されずに余るようになります。余ったエネルギーは脂肪に変わり、体に蓄積されていくため、太りやすくなります。
さらに、エネルギーが全身にしっかりと運ばれなくなることで、血管や内臓、筋肉の機能が衰え、冷え性、低血圧、低体温、肌荒れ、便秘、疲れやすいといった体の不調を引き起こします。代謝の低下は単に太りやすくなるだけでなく、体調不良の原因にもなるのです。
3.基礎代謝量の目安の計算方法
基礎代謝量は、生命を維持するために必要な最小限のエネルギー量です。目安となる基礎代謝量の計算は、以下の式を使って求めることができます。
基礎代謝量の計算式:基礎代謝基準値(kcal/kg体重/日)×体重(kg)
年齢別・性別の基礎代謝基準値
基礎代謝基準値とは、体重1kgあたりの基礎代謝量の代表値のことです。年齢や性別によって下表の通り異なります。
年齢(歳) | 男性 | 女性 |
---|---|---|
1~2 | 61.0 | 59.7 |
3~5 | 54.8 | 52.2 |
6~7 | 44.3 | 41.9 |
8~9 | 40.8 | 38.3 |
10~11 | 37.4 | 34.8 |
12~14 | 31.0 | 29.6 |
15~17 | 27.0 | 25.3 |
18~29 | 24.0 | 21.7 |
30~49 | 22.3 | 20.7 |
50~69 | 21.5 | 20.7 |
70以上 | 21.5 | 20.7 |
出典: e-ヘルスネット(厚生労働省)「加齢とエネルギー代謝」
上表を参照し、例えば30歳で体重60kgの女性の基礎代謝量を計算する場合、以下の計算式で求められます。
基礎代謝基準値:20.7
基礎代謝量:20.7×60kg=1,242kcal
基礎代謝量のピークは男性では15~17歳、女性では12~14歳とされており、年齢とともに基礎代謝量は低下する傾向があります。
ただし個人差もあり、体格、体温、ホルモンの状態、女性の場合は月経周期などによっても異なります。たとえば筋肉量の多い人は基礎代謝が高く、逆に筋肉量が少ないと基礎代謝が低くなる傾向にあります。また、体温が高い人の方が基礎代謝も高いとされています。
4.1日に必要な推定エネルギー必要量の目安は?
1日に摂取すべき推定エネルギー必要量の目安を把握するには、先ほど算出した基礎代謝量に個人の身体活動レベルを考慮する必要があります。
1日に必要な推定エネルギー必要量は「自分の基礎代謝量×身体活動レベル」で求めることが可能です。身体活動レベルとは、1日あたりの総エネルギー消費量を1日あたりの基礎代謝量で割った指標のことで、身体活動レベルは以下の通り3段階に分けられます。
身体活動レベルⅠ(低) | ほとんど運動をしない、または日常的な活動が少ない |
身体活動レベルⅡ(中) | 通勤や家事など、日常的に適度な運動をしている |
身体活動レベルⅢ(高) | 仕事や運動習慣があり、日常的に活発に活動している |
身体活動レベルが同じでも、年齢によって指標となる数値は下表の通り異なります。
年齢 | 身体活動レベルⅠ(低) | 身体活動レベルⅡ(中) | 身体活動レベルⅢ(高) |
---|---|---|---|
1~2 | - | 1.35 | - |
3~5 | - | 1.45 | - |
6~7 | 1.35 | 1.55 | 1.75 |
8~9 | 1.40 | 1.60 | 1.80 |
10~11 | 1.45 | 1.65 | 1.85 |
12~14 | 1.50 | 1.70 | 1.90 |
15~17 | 1.55 | 1.75 | 1.95 |
18~29 | 1.50 | 1.75 | 2.00 |
30~49 | 1.50 | 1.75 | 2.00 |
50~64 | 1.50 | 1.75 | 2.00 |
65~74 | 1.45 | 1.70 | 1.95 |
75以上 | 1.40 | 1.65 | - |
例えば30歳で体重60kgの女性で、身体活動レベルⅡ(中)の場合、1日に必要な推定エネルギー必要量は以下の通りです。
1日に必要な推定エネルギー必要量:1,242kcal×1.75=2,173kcal
5.基礎代謝量を上げよう!効率よく上げる方法
基礎代謝量を上げるためには、生活習慣の改善が効果的です。基礎代謝を高めることで、1日あたりの消費エネルギーを増やし、太りにくい体を作ることができます。また、代謝を上げることは美容効果や生活習慣病の予防にもつながります。
適度な運動で筋肉をつける
基礎代謝は筋肉量を増やすことで高めることができます。効果的な運動として筋トレがあり、ダンベルなどの器具を使ったメニューや、スクワットや腕立て伏せなどの自宅で簡単にできる運動でも効果があります。毎日少しずつ続けることで筋肉が増え、基礎代謝も徐々に高まります。
また、水泳やジョギング、ウォーキングなどの有酸素運動も体温を高めて基礎代謝を上げることができるため、筋トレと組み合わせると効果的です。
起床時にストレッチを行う
起床時にストレッチを行うと、大きな筋肉を刺激し、血行を促進する効果があります。ストレッチは代謝アップだけでなく、リラクゼーション効果もあり、心身ともに健やかに保てます。朝のストレッチで代謝を活性化させ、一日のスタートをスムーズに切りましょう。
水分をしっかり摂る
水分を摂ることで、各臓器への血の巡りが良くなり、代謝が上がります。特に寝ている間に汗をかくため、起床後にコップ1杯の水や白湯を飲むことをおすすめします。白湯は胃腸を温め、内臓の働きを活発にしてくれます。
必要な栄養素をバランスよく摂取する
筋肉をつくるのに欠かせないタンパク質や、基礎代謝を上げる働きがある炭水化物、ビタミンB群、ビタミンE、DHAなどの栄養素をバランスよく摂取することが重要です。豚肉、サバ、納豆、アーモンドなどを食事に積極的に取り入れ、無理なく健康的な食生活を心がけましょう。
体を温める食べ物・飲み物を摂取する
体温が下がると基礎代謝も下がってしまうため、体を温める食べ物や飲み物を摂取することが大切です。飲み物ではココアや紅茶、レモネード、食べ物ではショウガや唐辛子、玉ねぎなどが効果的です。ただし、コーヒーやお酒は体を冷やしやすいので控えめにしましょう。
良質な睡眠を確保する
睡眠不足はホルモンバランスに影響を与え、基礎代謝を低下させる原因となるため気を付けましょう。膵臓から分泌されるインスリンというホルモンの感受性を低下させ、脂肪の蓄積を助長する可能性があります。基礎代謝を上げるには、適切な睡眠時間を確保することが重要です。
6.生活習慣を見直して、基礎代謝を高めよう
基礎代謝は私たちの健康や体調に深く関わっている重要なエネルギーです。年齢とともに低下しやすい基礎代謝を維持・向上させるためには、適度な運動、バランスの良い食事、水分摂取、体を温める生活習慣が大切です。
日々の生活習慣を見直し、基礎代謝を効率的に上げることで、健康的な体を手に入れましょう。