情報掲載日:2024/11/09
【医師監修】ホルモンバランスを整えるには?女性ホルモンの種類と役割、ゆらぎの対策を解説します

女性の身体と心は、生涯を通じてエストロゲンとプロゲステロンという2つの女性ホルモンに大きく影響を受けます。これらのホルモンは 年齢や月経周期によって分泌量が変化し、その結果、様々な体調の変化が生じやすくなるためです。

本記事では「女性ホルモンを増やすことはできる?」「女性ホルモンのゆらぎにともなう不調の解消法はある?」といった疑問にお答えします。女性ホルモンの働きを理解し、 ホルモンバランスを整えるためのアプローチを考えてみましょう。

1.女性ホルモンとは?種類と役割

女性ホルモンとは?種類と役割

体の様々な機能を調節し、維持する役割を持つホルモン。ホルモンは体内の様々な器官から分泌されており、血液などを通じて全身に作用して、体のバランスを維持する役割を果たします。

女性の体内で多く生成される「女性ホルモン」は、月経や妊娠に深く関与します。主要な女性ホルモンとしてはエストロゲン(卵胞ホルモン)プロゲステロン(黄体ホルモン)の2つが知られており、それぞれ働きが異なります。女性が健やかな体を維持し、いきいきと過ごすためには、どちらも欠かすことのできないホルモンです。

エストロゲン(卵胞ホルモン)

女性の第二次性徴(生殖機能や丸みを帯びたボディラインの形成)を発達させるホルモンです。月経開始から排卵日までの期間は分泌が活発になり、子宮内膜を厚くして妊娠に備える働きを持ちます。ほか、肌や血管の健康にも関与するため、加齢によってエストロゲンの分泌が低下すると、肌のハリやうるおいが失われやすくなります。

エストロゲンは脳や自律神経にも働きかけるため、体だけでなく精神の安定にも影響します。骨密度を保つためにも重要で、エストロゲンの減少は骨粗しょう症のリスクを高めることがあります。

プロゲステロン(黄体ホルモン)

子宮内膜の環境を整えて、妊娠を維持するホルモンです。排卵日から次の月経が始まるまでの間に増加し、妊娠すると分泌量がグンと増加します。基礎体温の上昇や、乳腺の発達、体内の水分キープなどに関与しています。


2.女性ホルモンの分泌量が多い(少ない)と体にどんな影響がある?

女性ホルモンの分泌量が多い(少ない)と体にどんな影響がある?

エストロゲンの分泌量が多いと、生理痛が重くなったり、乳腺症や子宮筋腫、子宮内膜症などのリスクも高まったりすると言われています。一方、プロゲステロンの分泌量が多いと生理前に心身のゆらぎが大きくなり、様々な不調を招くことに。

また、エストロゲンの分泌量が少ないと妊娠や出産に関わる機能が低下します。また、プロゲステロンの分泌量が少ないと黄体機能不全※に陥り、不妊の一因にもなります。
※妊娠に適した子宮内膜の変化が正常に起こらない病態

エストロゲンは、生理の周期ごとに分泌量の増減を繰り返しますが、40歳を過ぎたころから分泌量自体が減少します。年齢が若くても、過度なストレスや過激なダイエット、冷え、睡眠不足などにより分泌量が減少するため、環境によるストレスや生活習慣の乱れには注意が必要です。

月経前の女性ホルモンのゆらぎ

エストロゲンとプロゲステロンの急激な変動はPMS(月経前症候群)にも関与していると考えられています。月経前に気分が激しく落ち込んだり、疲れやだるさ、強い眠気などで日常生活に支障がある場合は医療機関(婦人科)に相談してみましょう。

加齢にともなう女性ホルモンのゆらぎ・減少

閉経前後の女性ホルモン(エストロゲン)の分泌量の減少から起こる、心身の様々な症状のことを「更年期症状」と言い、このうち日常生活にも支障をきたすものが「更年期障害」です。主な症状には、ほてりやのぼせ、動悸や、イライラ感、不安などがあります。


3.ホルモンバランスはセルフチェックできる?

ホルモンバランスが乱れていると、排卵が起きなかったり月経周期が乱れたりすることで、妊娠しにくくなることがあります。

排卵があるかどうかをチェックしたい場合は、毎朝起きてすぐ、安静の状態で基礎体温を測ってみましょう。排卵が正常に行われている場合は、月経開始日から排卵日まで低温期が約2週間続き、排卵すると次の月経まで約2週間は高温期が続きます。2~3周期の体温を記録して体温が二相に分かれていない場合や3カ月間月経がない場合には、排卵をしていない疑いがあります。

ホルモンバランスはセルフチェックできる?

※表の36.70℃の線は低温期と高温期を区別する目安の体温を表しています。低温期と高温期の基礎体温には個人差があります。

約1カ月の体温が低温期と高温期の二相に分かれていて、その期間が均等に近ければ、2つの女性ホルモンが正常に働いて排卵や妊娠の準備が行われているサインです。月経前の体調にゆらぎがあっても心配しすぎず、生理痛や頭痛がつらい場合は市販の解熱鎮痛薬を服用して様子を見ましょう。生理痛やだるさが酷く起き上がれない、経血の量が多すぎるなどの場合には何らかの疾患が関与しているケースもあるため医療機関(婦人科)の受診をおすすめします。

閉経が近づくと、低温期と高温期それぞれの周期が短くなることで、月経が頻発するようになります。このように、基礎体温の推移は自分のホルモンバランスを知るヒントになるでしょう。


4.ホルモンバランスを整えるセルフケア方法

ホルモンバランスを整えるセルフケア方法

ホルモンバランスは妊娠や出産はもちろん、女性の健康と密接に関わっています。ここからはホルモンバランスを整えるために自分でできるケアを紹介します。

食習慣の見直し

栄養バランスのとれた食事を1日3回、決まった時間にとることを心がけましょう。

更年期にはホルモンバランスの乱れにより、ほかの病気のリスクも高まります。十分な栄養がとれていないと、さらに心身の健康を損なう恐れがあるため、米などの主食、肉や魚などの主菜、野菜などの副菜をバランスよく摂取しましょう。肉だけではなく魚も摂ったり、食物繊維を積極的に摂ったりすることは、性別や年齢を問わず健康維持のために重要です。

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ホルモンの原料になる栄養素を含む食べ物

栄養素の中でもホルモンの原料となるタンパク質は不足しないように心がけましょう。タンパク質は、肉類、魚介類、卵類、乳類などのほか、豆類、穀類など植物性食品に多く含まれています。日本人の食事摂取基準によると18歳以上の女性が1日当たりに摂るべきタンパク質の量は50gです。

食品(100g あたり)に含まれるタンパク質の量

  • 鶏 ささみ 生 24.6g
  • 豚 ロース 赤肉 生 22.7.g
  • 鶏卵 全卵 生 12.2g
  • 大豆 全粒 黄大豆 国産 乾 33.8g
  • 油揚げ 油抜き 生 18.2g

出典:日本食品標準成分表(八訂)増補 2023 年

女性の健康維持に欠かせない栄養素を含む食べ物

ビタミンEは脳の下垂体や副腎系に作用してホルモン分泌の調節に関与すると考えられていいます。ビタミンEが不足すると、冷え性や頭痛、肩こりなどの不調を感じやすくなるため、間食などに摂り入れてみることもおすすめです。ビタミンEはアーモンド、くるみなどのナッツ類に多く含まれています。

また、女性は生理の影響で貧血になりやすいため、鉄分を多く含むレバーや牡蠣、しじみなどの食品も摂りましょう。

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十分な睡眠

ホルモンの分泌には自律神経のバランスも大きく関わっています。良質な睡眠で自律神経のバランスを整えましょう。夜なかなか寝付けない、朝起きたときに眠気を感じるという人は、次のようなアクションを試してみてはいかがでしょうか。

  • 就寝の2~3時間前までに食事を済ませる
  • ベッドに入る1.5時間~2時間前に入浴し、ゆっくり体を温める
  • 寝る直前にスマートフォンやパソコンの使用を控える
  • 就寝前にカフェインを含む飲み物を控える

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適度な運動

適度な運動は血行と代謝を良くすることにつながります。ヨガやストレッチなど、軽い運動をまめに取り入れることから始めてみましょう。

ストレス発散

過度なストレスは自律神経のバランスを崩す原因になります。家事や仕事の負担が大きくストレスを感じたら、周りの人と相談し、自分の仕事量や責任の範囲を調整しましょう。

また、映画や音楽鑑賞などの趣味、友人との会話などで適度にストレスを解消することも大切です。好きな色や香りを身にまとって気分転換を図るのもよいでしょう。


5.加齢で減った女性ホルモンを増やすことはできる?

加齢で減った女性ホルモンを増やすことはできる?

結論から言うと、セルフケアでは加齢で減少した女性ホルモンの分泌量を増やすことはできません。閉経前後の約10年間を指す更年期は、女性ホルモンの急激な減少によって不調を覚えやすいため、ほてりやのぼせ、めまいなどの更年期症状がある場合は、無理をせず体を休めましょう。

更年期障害の治療法としては、減少したエストロゲンを補うホルモン補充療法(HRT)が期待されています。のぼせ、ほてり、発汗などの更年期障害でお悩みなら婦人科や更年期外来などの受診も検討してみましょう。

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6.自分を大切にする時間を作って、女性ホルモンのゆらぎに備えよう

月経前や思春期、更年期などは特に女性ホルモンのゆらぎの影響を受けやすい時期です。気分や体調に波があるのは女性ホルモンが働いているサインでもあるため、つらい時には「無理をしない」ことを心掛けましょう。そのうえで生活習慣や周辺の環境を整理し、ホルモンバランスを整えるために出来ることを探してみてはいかがでしょうか。