目の乾きによる疲れ目やコンタクト装着時の不快感の緩和などに使用する目薬(点眼薬)。使用方法や適切な頻度を守らず目薬を差しすぎると、かえって目に負担をかけることがあります。本記事では目薬の差しすぎによって起こりうるトラブルを紹介し、正しい点眼方法や適切な点眼回数について解説します。
1.目薬(点眼薬)とは?
目薬(点眼薬)とは、目や目の周りに使う無菌の外用剤で、点眼液や眼軟膏があります。製品によって抗生物質や抗アレルギー薬、抗炎症薬、ビタミン類などが含まれます。
目の病気の治療や目の疲れなどをやわらげるために、直接目に使用します。目薬は結膜嚢(けつまくのう)という部分に一時的に貯留された後、体内に吸収されます。
*眼球とまぶたを結びつける粘膜である結膜全体を、袋のような状態と見なして「結膜嚢」と呼びます。
2.目薬の差しすぎはよくない?
目薬は目のかすみや乾燥など何らかの症状がある時に使用します。事務作業の合間のリフレッシュ感覚で多用している人もいますが、目薬の差しすぎは目にも、全身の健康にもよくありません。
目薬を差しすぎることによって、目の表面を覆っている粘膜・涙・薄い油の三層構造が崩れ、目の表面に傷がついてしまうことがあります。涙が不足して目が乾くドライアイの場合、目の表面に細かい傷がついていることがあり、そこに目薬を差しすぎると傷が広がって悪化してしまうおそれも。
また、目薬を一度にたくさん差しすぎると、結膜嚢に貯留しきれなかった薬液が鼻涙管(びるいかん)という目頭の穴から鼻につながる管を経て全身へ行き渡りやすくなり、全身作用が増えるリスクも高まります。中でも緑内障の治療に用いるβ(ベータ)遮断薬はぜんそくや心不全などを悪化させる副作用があるため、差しすぎは非常に危険です。
目薬は必ず用法用量を守って使いましょう。
3.正しい点眼方法
ここからは、正しい目薬の差し方を紹介します。
1.手をきれいに洗う
手についた汚れや雑菌を目に入れないよう、まずは両手をせっけんと流水でよく洗いましょう。
2.下まぶたに目薬を落とすイメージで1滴落とす
点眼する前によく振り混ぜるよう注意書きがある場合は、点眼前にキャップを閉じたままよく振り混ぜましょう。
頭を後方に傾け、天井を見つめるようにして、片手で下まぶたを軽く引っ張ります。もう片方の手で容器を目の真上に持ってきて、1滴点眼してください。このとき、容器の先端がまぶたやまつげに触れないように注意しましょう。
3.静かに目を閉じて薬液をなじませる
目薬を差し終えたら、静かに目を閉じて、目頭を1~5分程度軽く指でおさえましょう。目薬が目から溢れたら、清潔なティッシュやガーゼなどで拭き取ってください。
4.目薬を差しやすい「げんこつ法」
まずは点眼の前に両手をせっけんと流水でよく洗いましょう。片手でげんこつをつくり、目薬を点眼する目の下まぶたにあてて軽く下に引っ張ります。もう片方の手で目薬を持ち、そのげんこつの上に手をのせて、点眼しましょう。目薬を持った手が固定されるため、正確に点眼できる確率が上がります。
5.目薬の差しすぎ以外にも!間違った点眼方法
目薬の使用にあたっては、差しすぎ以外にも気を付けるべき点があります。下記に挙げるのは目薬を差すときについやりがちな行動の一例です。ご自身の使用方法と見比べてみましょう。
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目薬の容器の先端が身体に触れる
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点眼後すぐにまばたきをする
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うまく差せなかった目薬を無理やり目の中に流し込む
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他人と目薬を貸し借りする
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使用期限を過ぎた目薬を使用する
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防虫剤や湿布薬、芳香剤などの近くに置く
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油性ペンで点眼容器に直接記入する
目薬の容器の先端が眼球やまぶた、まつげなどに触れないように、目から少し離して点眼しましょう。雑菌などが目薬の容器につき、中身を汚染させる可能性があります。手で目薬の先端を触ることもよくありません。
点眼後、すぐにまばたきをすると、せっかく差した目薬が目から流れ出てしまいます。また、流れ出た目薬を無理やり目の中に流し込むと、目の周りの異物も一緒に入ってしまうおそれがあります。目薬を差した後は、目頭を指で軽くおさえ、しばらく目を閉じておきましょう。
防虫剤や湿布薬の近くに目薬を置いたり、油性ペンで点眼容器に直接記入したりすると、揮発成分が容器を通って点眼液に溶け込んでしまうことがあります。保管場所にも気を付けてください。
6.目薬に関するよくある質問
最後に、目薬(点眼薬)に関するよくある質問とその回答を紹介します。
目薬の適切な点眼回数は?
医師の指示がない市販薬などの場合は1日3~6回が目安とされています。使用前に説明書や添付文書をよく読み、その指示に従いましょう。たくさん差したからといって症状が早く良くなるわけではありません。逆に症状を悪化させる原因にもなるため、必ず用法用量を守りましょう。
目薬の適切な量は?
基本的には1回1滴で十分です。それ以上は結膜嚢に貯めきれず、目から溢れたり、鼻涙管を通って体内に流れ込んだりしてしまいます。医師や薬剤師から点眼量について指示があった場合はそちらに従いましょう。
2種類以上の目薬を差す場合はどのくらい間隔をあける?
最初に差した薬液が流れないよう、少なくとも5分以上の間隔をあけましょう。振って使用するタイプの目薬は吸収されにくいため、後に回してください。医師や薬剤師から、差す間隔や順番について指示があった場合は、そちらに従いましょう。
コンタクトをつけたまま目薬を差してもいい?
コンタクトをつけたまま差せる目薬ならばOKです。コンタクトや目薬の種類によるため、事前にしっかりと確認しましょう。コンタクト装着時にも使用できるかどうかは、市販薬の場合はパッケージに記載されています。処方薬の場合は医師や薬剤師に確認してください。
コンタクトOKの目薬とそうでない目薬では、防腐剤の成分に違いがあります。コンタクト装着時に裸眼(コンタクトをつけていない時)用の目薬を使用すると、角膜障害の原因となったり、コンタクトレンズが変形してしまったりするおそれも。コンタクトNGの目薬を使う場合は、必ずコンタクトを外してから点眼してください。
開封した目薬の使用期限は?
パッケージに書かれている使用期限は、未開封状態の場合での使用期限となります。市販薬の目薬の場合、開封後の期限は一般的に約2~3ヵ月が目安とされています。
また、目薬に色の変化やにごり、浮遊物などが認められた場合は、直ちに使用を中止しましょう。
7.目薬は用法用量を守って正しく使おう!
目薬(点眼薬)をたくさん差しても、症状が劇的に良くなるということはありません。また、用法用量を守らなければ、重大な副作用が生じることもあります。目薬を正しく使って、健康な目を保ちましょう。