疲労には労働や運動などによる肉体疲労、不安や緊張などのストレスによる精神疲労など様々なタイプがあります。それらの疲労を蓄積させないためには十分な休息や適度な運動が大切ですが、忙しいとなかなか時間を作れないのが実情ではないでしょうか。
そこで本記事では毎日の食生活に着目し、疲労回復に役立つ食べ物・飲み物と、効果的な摂取方法を詳しく解説します。
1.疲労と密接にかかわる栄養とは?
食事では五大栄養素であるタンパク質、脂質、炭水化物、ビタミン、ミネラルをバランスよく摂ることを意識しましょう。五大栄養素の中でも疲労と関わりが深いものには下記があります。
タンパク質
アミノ酸から構成されているタンパク質。皮膚、骨、筋肉、血管などの組織のほか、酵素、ホルモン、抗体などの材料になる健康維持に欠かせない栄養素です。酵素やホルモンとして代謝を調節するタンパク質が不足すると、体内の代謝がうまくいかず、疲労を感じやすくなります。タンパク質は肉類・魚介類・卵類・乳類などのほか、豆類・穀類などに多く含まれています。
炭水化物(糖質)
米やパン、麺類などの穀類、いも及びでん粉類などから摂取できる炭水化物。炭水化物には、脳や身体のエネルギーとなる糖質と、体内で消化できない食物繊維があります。
糖質の摂取を控えると、エネルギー(カロリー)不足から、疲労を感じやすくなることも。特に、糖質が消化吸収を経て最終的に分解されたブドウ糖は脳のエネルギー源であるため、不足すると集中力や思考力が低下することもあります。
脂質
脂質は三大栄養素(タンパク質、炭水化物、脂質)の中でも最も高いエネルギーを得られる栄養素です。体内でホルモンや細胞膜、核膜を構成する材料となったり、皮下脂肪として臓器を保護したりする働きもあります。
摂り過ぎると肥満などの原因になることが知られていますが、脂質の摂取量が不足すると、エネルギーが不足して疲れやすくなるため、普段から少食の方や、加齢で食が細くなってしまった方は意識して摂るようにしましょう。
脂質は肉類、オリーブオイルやごま油などの油脂類、マヨネーズやドレッシングなどの調味料に多く含まれています。
ビタミンB群
ビタミンB1は炭水化物(糖質)をエネルギーに変える際に不可欠です。不足すると十分にエネルギーをつくれず、食欲不振や疲労・だるさにつながりやすくなります。ビタミンB1は、肉類、魚類、豆類、穀類、種実類※などに多く含まれています。
※穀類あるいは豆類以外の種子及びその製品
ビタミンB2は脂質をエネルギーに変える際に必要な栄養素です。不足すると、疲労のほか、肌荒れや口内炎を招くことも。ビタミンB2は、魚類、肉類、藻類、豆類、乳類、卵類、野菜類、種実類などから摂取できます。
ビタミンB6は補酵素として、タンパク質の元となるアミノ酸の代謝をサポートします。つまり、食事で摂ったタンパク質をエネルギーに変えるために重要な栄養素です。ビタミンB6は、野菜類、穀類、魚類、種実類などに多く含まれています。
ビタミンC
ビタミンCは、疲労回復に欠かせない栄養素です。疲労の原因となる活性酸素を抑える抗酸化作用を持ちます。果実類、野菜類、いも及びでん粉類に多く含まれています。
鉄分
女性は特に不足しやすい鉄分。鉄は血液中の酸素運搬を担っているヘモグロビンの構成成分です。不足すると貧血になり、それにより倦怠感や息切れ、疲れやすさなどを招くことがあります。鉄分を多く含む食品には肉類、魚介類、藻類、野菜類、豆類などがあります。
2.疲労回復に役立つ食べ物
仕事や家事の負荷が変わらなくても「最近疲れやすい」と感じる場合は、普段の食事で十分な栄養素を摂れていないことが一因かもしれません。下記のような身近な食材を献立にプラスしてみてはいかがでしょうか?
肉類
肉類に含まれる動物性タンパク質は必須アミノ酸(タンパク質を構成するアミノ酸のうち、体内で生成されないもの)であるトリプトファンを多く含み、筋肉の修復・精神的な疲れの両方に作用すると言われています。中でも豚肉はビタミンB1を多く含むため、疲労回復効果が高いとされています。
鉄分やビタミンB2を多く含む豚や鶏のレバーもおすすめ。レバーなどの食肉に含まれる鉄はタンパク質と結びついたヘム鉄であり、植物性食品に含まれる非ヘム鉄よりも吸収率が高いと言われています。
鶏むね肉や豚ロース肉にはイミダゾールジペプチドという成分が豊富に含まれていて、疲労の原因となる活性酸素の抑制が期待できます。
魚
同じ動物性タンパク質でありながら、肉よりもカロリーが低く、DHAやEPAを含むものが多い魚。特にカツオはビタミンB群を多く含むため、疲労時は積極的に摂りたい食品です。ウナギも栄養価が高く、ビタミンB1の含有量は魚介類の中でもトップクラス。ビタミンB2やビタミンEも多いとされています。
また、マグロやカツオなどの回遊魚にも、鶏むね肉と同じくイミダゾールジペプチドが含まれています。
フルーツ
レモンやオレンジなどの柑橘類にはビタミンCが多く含まれるほか、クエン酸も多く含んでいます。
クエン酸はその酸味そのもので食欲増進が期待できる栄養素です。運動後の血中乳酸の除去を促進する作用が示唆されているほか、新陳代謝のサポート、ミネラルの効率的な吸収など、疲労回復につながる様々な作用を持っています。
3.疲労回復に役立つ食べ物・飲み物
ここからは、疲れのタイプごとに、疲労回復に役立つ食べ物・飲み物を紹介します。
筋肉疲労
スポーツなど、体を動かした後の筋肉疲労には、傷んだ筋肉を修復するのに欠かせないタンパク質を摂りましょう。疲れを感じている時は、肉や魚、たまごなどの動物性のタンパク質よりも、低脂質で消化の良い納豆や豆腐などの植物性タンパク質のほうがおすすめです。
また、BCAA(分岐鎖アミノ酸)を含む飲み物を運動前後や運動中に飲むと、疲労の抑制に役立つと言われています。
勉強や仕事による脳の疲労
頭をたくさん使った後には、脳のエネルギー源となるブドウ糖を補うことが大切です。ブドウ糖を含むプルーンなどのドライフルーツ、はちみつなどを摂りましょう。ただし、一度にたくさん摂取すると血糖値が乱高下して血管へのダメージを招くため、量には注意が必要です。
サバ、イワシ、アジなどの青魚類に含まれているDHAも積極的に摂りたい成分のひとつです。脳神経機能の働きをサポートし、記憶力や判断力の向上、血流改善や精神安定など、さまざまな作用をもたらすとされています。
4.疲労回復に役立つ栄養素をより効果的に摂る方法
最後に、疲労回復に役立つ栄養素をより効果的に摂取する方法と、その際の注意点を紹介します。
ビタミンB群
水溶性ビタミンであるビタミンB群は、食品を切って水にさらしたり、茹でる時間が長いと失われやすい栄養素です。一度に吸収される量も多くなく、体内から失われやすいため、何回かの食事に分けて摂取することがおすすめです。特に、脂質の多い食事や飲酒後は、多くのビタミンB群が代謝に使われて不足しやすくなるため、意識的に摂りましょう。
ビタミンB1は抗酸化作用に優れているアリシンと一緒に摂るのがおすすめです。アリシンはにんにくやネギなどの香味野菜に多く含まれる成分ですが、水に溶けやすく熱に弱いため、細かく刻む、すり潰すなどの調理法で生のままで食べたほうが良いとされています。ビタミンB1を多く含む肉類・魚類を使った料理の薬味として取り入れてはみてはいかがでしょうか。
ビタミンC
ビタミンCは水溶性ビタミンの一種で、熱に弱いという特徴があります。そのため、調理の際はできるだけ水にさらさない、必要以上に加熱しないことが重要です。
ビタミンCはビタミンEと一緒に摂ると、抗酸化作用がアップ。ビタミンEはごま油やナッツ類などに含まれているため、非加熱のサラダにナッツをプラスする、ビタミンCを多く含む野菜などをごま油でサッと炒めるなどの調理方法がおすすめです。
鉄分
鉄分はタンパク質やビタミンCと一緒に摂ると、効率よく吸収できると言われています。鉄製のフライパンなどを使って調理するのもおすすめです。
一方、緑茶や紅茶、ウーロン茶、コーヒーなどに含まれるタンニンは、鉄の吸収を阻害します。また、玄米やおからなどに含まれる不溶性食物繊維は、排出される時に鉄分を一緒に排出してしまいます。食べ合わせには注意しましょう。
ブドウ糖
脳のエネルギー源であるブドウ糖。そのブドウ糖をエネルギーに変えるには、ビタミンB1が不可欠です。そのため、ブドウ糖を摂る場合は、ビタミンB1をあわせて摂るように心がけましょう。おにぎりの具材を、肉や魚などビタミンB1豊富な食材にするのもおすすめです。
5.おいしく食べて、体の内側から疲労対策!
心身の健康を保つには、十分な睡眠や定期的な運動などと合わせて、バランスのとれた食事を摂ることが大切です。「会議で頭を使った」「一日中立ちっぱなし」などで疲労を感じたときは、十分な睡眠と栄養豊富な食事で疲労回復に努めましょう。