情報掲載日:2024/11/23
【医師監修】白内障と緑内障の違いとは?それぞれの症状・原因・治療法も解説します

加齢とともに発症リスクの上がる白内障と緑内障。たった漢字一文字の違いですが、その症状や原因、治療法は全く異なります。今回は、白内障と緑内障の症状の違いや併発の可能性について解説します。

1.白内障とは?

白内障の症状と兆し

白内障とは?

軽度の白内障
出典: 日本眼科学会

白内障とは、「水晶体」という目の中のレンズの役割を持つ組織が濁る病気のことです。濁り方や程度には個人差があり、かなり進行した場合、瞳孔(黒目の中心)まで白く変色します。

通常、水晶体は外からの光を集めて視界のピントを合わせる働きをしますが、これが濁ると光が正常に通過しなかったり、乱反射を起こしたりすることで、見え方に異常をきたします。

初期は自覚症状が出にくいものの、症状が多岐にわたることも特徴です。白内障により起こる主な初期症状には以下が挙げられます。

  • 目がかすむ
  • ぼやけて見にくい
  • 視力が落ちる
  • ものが二重三重にだぶって見える
  • 光がまぶしい(明るいところで見えづらさを感じる)

白内障の場合、目のかすみや視界のぼやけによって異変を感じても、一時的な「疲れ目」と判断してしまいがちです。痛みや充血などの症状が出ることはほとんどないので、早期発見のために、40歳を過ぎたら目に違和感がないかこまめにチェックをしましょう。

白内障の原因

白内障の大きな原因は加齢によるもので、これを「加齢性白内障」と呼びます。早い人だと40代から発症し、80代ではほぼ100%の発症率です。一種の老化現象でもある加齢性白内障は、個人差はあるものの、誰でも年齢を重ねることで発症するリスクがあると言えます。

加齢以外では、生後すぐから発症している先天白内障、糖尿病やアトピー性皮膚炎、目の病気があるなどの併発白内障のほか、薬剤や放射線の影響を受けた場合も、早くに発症しやすい傾向にあります。

白内障の治療法

白内障の治療法は、症状の進行度合いによって異なります。症状が日常生活に支障をきたさない程度の初期段階であれば、点眼薬で進行を遅らせることもできますが、すでに進行した白内障の治療には手術が必要です。

濁ってしまった水晶体はもとには戻らないため、手術を行う場合は、濁った水晶体を取り除き、代わりに眼内レンズを挿入する方法が一般的です。

白内障の治療法

2.緑内障とは?

緑内障の症状と兆し

緑内障とは、目で得た情報を脳に伝える「視神経」に障害が起きる病気です。片目だけでなく両目に起こることも少なくありません。

湿疹の症状

初期段階での自覚症状はほとんどありませんが、目の中心から少しはずれた部分で、視野の一部が欠ける症状が出たら、すぐに眼科で検査することをお勧めします。両目で見るとなかなか気づきにくいですが、視界がかすんで文字を読み飛ばしてしまうことが度々ある場合は要注意です。

緑内障の症状が悪化すると、視野の欠損の範囲が次第に広がり、失明に至るケースもあるので、早期の治療により進行を抑えましょう。

緑内障の原因

緑内障は、目の中を循環する「房水(ぼうすい)」と呼ばれる液体の排出がうまくいかなくなり、眼圧(眼球内の圧力)が高まることで起こる病気です。

下記の図は房水の流れを水色の矢印で示したものです。房水は、目のピント調節にも関与する毛様体(もうようたい)で作られると、虹彩(こうさい)という膜の裏側から表側に回り、繊維柱帯(せんいちゅうたい)を経てシュレム管から排出され、眼外の血管へ流れていきます。

緑内障の原因

出典: 日本眼科学会

この経路で房水の循環が正常に機能していれば、眼圧はほぼ一定に保たれますが、房水の排出路となる管が詰まるなどで眼圧が上昇すると、視神経が圧迫されて障害を起こし視野が狭まります。

緑内障の原因2

なお、緑内障は、発症原因や眼圧の程度によって診断名が異なります。タイプは房水の排出路がふさがっているか開いているかで大別できますが、複数の要因が同時に起こる混合型や先天的な理由で発症する緑内障もあります。

閉塞隅角緑内障(へいそくぐうかくりょくないしょう)

房水の排出路が狭くなる、または閉塞することによって起きる緑内障を指し、発症速度により慢性と急性に分けられます。急性のものでは、房水が急に排出されなくなることで、眼圧が著しく上昇。視野の変化のほか、眼痛や頭痛、吐き気などの症状を起こす場合もあり、緊急の場合は手術が必要です。

開放隅角緑内障(かいほうぐうかくりょくないしょう)

房水の排出路が見かけの上でふさがっていない緑内障を指します。 ゆっくりと眼圧が上昇し、緑内障が進行する「慢性型」です。

開放隅角緑内障の中には、眼圧が正常の範囲に収まっているにもかかわらず、何らかの要因により視神経が障害されて発症する「正常眼圧緑内障」もあります。このリスク要因としては遺伝や免疫、酸化ストレス、あるいは加齢や近視などが考えられます。

その他を原因とする緑内障

遺伝子にかかる先天性の場合や外傷、目の病気・炎症、ステロイド剤使用(頻繁あるいは長期にわたるケース)などから誘発を起こす場合に、眼圧が上昇し、緑内障になることもあります。

緑内障の治療法

緑内障の治療は、眼圧を下げて進行を止める、もしくは遅らせることが基本です。視力や視野を回復させる白内障の治療とは性質が異なります。

緑内障の治療には、主に以下の3つが用いられます。

薬物投与

点眼による治療が基本です。眼圧を下げ、急性の症状を抑える飲み薬もありますが、全身の副作用が出るリスクを考慮し、飲み薬の使用は医師が慎重に判断します。

レーザー治療

閉塞隅角緑内障の多くは、レーザーで虹彩に孔(あな)を開け、房水の流れを変えることにより治療が可能です。また、一部の開放隅角緑内障に対しては、繊維柱帯にレーザーを照射して、房水の排出を促す方法もあります。

痛みもほとんどなく、入院せずに外来のみで治療できるというメリットもあります。

手術

薬物療法やレーザー治療ではあまり効果が得られなかった場合に行われます。

基本の手術法は、房水を目の外にしみだせるようトンネルを作る手術、もしくは線維柱帯を切って房水を排出しやすくする手術の2パターンがあります。ただし、手術による治療には、術後合併症や再発のおそれもあるため、術後も定期的な管理が必要です。


3.白内障と緑内障の違い

白内障と緑内障の違い

白内障と緑内障が大きく違うのは、人工レンズの挿入により見え方を回復できる白内障に対して、緑内障は見え方が回復しないという点です。緑内障では、一度失った視力は薬や手術を行っても回復が見込めません。そのため、障害の進行をできるだけ抑えることが先決です。


4.白内障と緑内障を併発する可能性は?

白内障と緑内障を併発する可能性は十分あります。

白内障は「水晶体」、緑内障は「視神経」と、原因となる部分が違いますが、一部の白内障では水晶体が膨化することで房水の出口を圧迫し緑内障を引き起こします。その場合、人工レンズを挿入する白内障手術を行うことで眼圧が下がり、緑内障の治療が不要になることもあります。

ただし、進行度合いや症状などによって、どちらかの治療を優先させた方がよいこともあるため、眼科専門医とよく相談のうえ治療計画を立てましょう。どちらの病気も早期発見・早期治療が重要なため、気になる症状がある場合は早めに眼科受診をし、自覚症状がない場合でも定期的に検診を受けることが大切です。

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5.白内障も緑内障も早期治療が肝心

症状・原因・治療法が異なる白内障と緑内障。どちらも生活に支障をきたす病気で、併発するリスクもあるため注意が必要です。気になる症状が現れたときはもちろん、定期的に眼科検診を受け、早期発見・早期治療に努めましょう。