情報掲載日:2024/10/10
【医師監修】熱を下げる方法とは?急な発熱に備えて用意しておきたいもの

風邪やインフルエンザ、ワクチン接種後の副反応の代表的な症状として、発熱があります。熱が出てつらい時、どのように対処すべきなのでしょうか。本記事では 発熱のメカニズムから発熱時の対処法、市販の解熱薬によるセルフケアの方法まで詳しく解説します。


1.なぜ熱が上がる?発熱のメカニズムとは

病気の原因となる細菌やウイルスが体内に侵入すると、一部の免疫細胞が体温調節をつかさどる脳の視床下部に外敵の侵入を伝え、平熱よりも体温を上げることで免疫細胞の働きを活性化させます。発熱はウイルスや細菌の増殖を抑えるための防御反応であるため、熱が出たからといって焦って下げる必要はありません。

そうは言っても、40度を超えるような高熱が出ると、脳に悪影響があるのではないかと不安になる方も多いでしょう。高熱が出ても、意識がはっきりしていて、発熱以外に呼吸困難やけいれん、胸痛などの症状がない場合は過度な心配は無用です。

熱が出たらまず「検査」を

免疫細胞の働きが活発になっているとはいえ、やはり発熱はつらいもの。新型コロナウイルス感染症やインフルエンザへの感染が疑われる場合は、発熱外来やかかりつけの医療機関へ連絡し、検査を受けましょう。

のどの痛み、発熱、咳、倦怠感等の症状を自覚した際は、医薬品の抗原検査キットを使ってセルフチェックを行うことも可能です。抗原検査キットはドラッグストアで購入できるので、急な発熱時にも医療機関を適切に受診するために常備しておくことをおすすめします。

※無症状者への使用は推奨されていません。

※症状がない時に使用した場合、結果が正しく出ない可能性があります。


2.熱中症による体温上昇の可能性も

春から夏にかけてリスクの高まる熱中症も、体温の上昇を引き起こすことがあります。通常、人間の体温が一定に保たれているのは、脳の体温調節中枢の働きによるものです。しかし熱中症の場合は、暑さによって体内の脱水状態が進んで体温調節中枢がきちんと機能しなくなり、体温が平熱よりも高く上昇します。

解熱剤は体温調節中枢に作用することで熱を下げるため、体温調節中枢のコントロールが効かなくなっている熱中症においては本来の効果を発揮しません。熱中症によって体温が上昇している時には、すぐに涼しい場所に移動し、氷枕や冷却ジェルなどで身体を冷やしたり、水分を補給したりして回復をはかりましょう。


3.熱を下げたい!発熱時の対処法

新型コロナウイルス感染症やインフルエンザ、熱中症ではないことが確認できたら、次の方法で体を休めて回復を待ちましょう。

まずは安静に

発熱時はただ横になっているだけでも体力が消耗されます。無理に体を動かすと、症状が悪化したり、発熱が長引いてしまったりするおそれも。

熱が出てきたらできるだけ体力を温存して、体の回復に努めることで、結果的に熱が早く下がります。食事やトイレなど、必要最小限にとどめ、なるべく寝て過ごすのがおすすめです。

水分補給を積極的に

発熱時は、寝ているだけでもかなりの汗をかくため、体内の水分が普段より多く失われます。脱水症状を起こさないためにも、こまめな水分補給を心がけましょう。

発汗すると、水分だけでなく塩分も同時に失われます。発熱時の水分補給は、塩分やミネラルを含むスポーツドリンクや経口補水液がおすすめです。

食事や睡眠は十分に

発熱で体力を消耗しきってしまうと、回復まで時間がかかるおそれもあるため、できるだけ食事や睡眠をとり、体力を補いましょう。ラーメンやピザといった脂肪分の多い食事は消化にエネルギーを使ってしまうので、発熱時には控えたほうが無難です。

クーリングも有効

悪寒がする場合は、まだ熱が上がりきっていないため、なるべく体を温めましょう。厚着をしたり、温かい飲み物を飲んだりするのもおすすめです。

熱が上がりきり、汗をかいたり、暑く感じたりしたら、体が上がった熱を平熱に戻そうとしているサイン。薄着にして、こまめに汗を拭きましょう。わきの下や首筋、足の付け根など、太い血管があるところに、タオルに包んだ保冷剤をあてる「クーリング」も有効です。

つらい時は解熱鎮痛薬を使おう

発熱による体力の消耗がひどい場合は、無理せず市販の解熱鎮痛薬の服用を検討しましょう。


4.ワクチン接種後の発熱にはどう対処する?

新型コロナウイルス感染症をはじめとする感染症のワクチンは病原体を構成する物質やその遺伝情報などをもとに作られています。ワクチンを接種することで発症や重症化の予防が期待できますが、ワクチン接種後、病原体に対する免疫を獲得する過程で、発熱などの副反応がみられることがあります。

新型コロナワクチンおよびインフルエンザワクチン接種後の副反応による発熱の場合にも、解熱鎮痛薬は有効です。熱を下げるだけでなく、関節痛などの緩和も期待できます。

ただし、ワクチン接種前に、予防的に解熱鎮痛薬を服用することは推奨されていません(※)。ワクチン接種後、発熱や頭痛などの副反応がある場合は服用を検討してください
(※)2024年6月17日時点


5.市販の解熱鎮痛薬によるセルフケアのポイント

発熱で体がつらい時には、我慢せずに医療機関を受診しましょう。適切な診断で原因に合った対処ができます。

急な発熱にすぐ対処したい場合は、市販の解熱鎮痛薬を服用して様子を見る方法もあります。焦る気持ちがあっても、解熱鎮痛薬は用法・用量を守って正しく服用してください。自分の症状や体質に合った薬がわからない時は、かかりつけの医師や薬剤師に相談して選びましょう。

特に、薬剤性のアレルギーやぜんそくの既往がある人、医療機関で処方された薬を服用している人、妊娠中の人は購入前に必ず薬剤師に相談しましょう。妊娠している場合、NSAIDsは避けたほうが良いとされています。

NSAIDsとは

  • 非ステロイド性抗炎症薬を意味するNon-Steroidal Anti-Inflammatory Drugsの略称。

  • 痛みのもととなるプロスタグランジンという物質の生成を抑制し、痛みや発熱、炎症の症状を抑える。

  • 主なNSAIDsにはイブプロフェン、アスピリン、ロキソプロフェンなどがある。

解熱鎮痛薬は新型コロナウイルス感染症の発熱時にも服用可能

新型コロナウイルス感染症の療養中に発熱した場合も、市販の解熱鎮痛薬を服用できます。ただし、新型コロナウイルス感染症の療養に関する政府の方針は変異株の発生などの状況に応じて変わるため、発熱した時点で最新情報を確認しましょう。

  • 新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付けは、2023年5月8日をもって2類から5類へ移行され、一般の医療機関でも診察を受けられるようになりました。

  • さらに、2024年4月1日からは通常の医療提供体制に完全移行し、治療薬や入院医療費の公費負担が終了しています。そのため、現在は医療機関で診察を受けて治療薬を処方されたり、入院が必要になったりした場合は、各自の医療費の自己負担割合に応じた金額の支払いが必要です(※1)(※2)。

  • 症状が比較的軽いのであれば、抗原検査キットによるセルフチェックや、市販の解熱鎮痛薬などを使ったセルフケアも検討しましょう。

  • ※1 2024年6月17日時点

  • ※2 高額医療費制度の適用により、所得に応じて一定額以上の負担は生じない

  • 最新情報は 厚生労働省のWebサイト をご確認ください。

インフルエンザによる発熱に使用可能な解熱鎮痛薬

インフルエンザによる発熱が疑われる場合は、早急に医療機関を受診しましょう。医師の判断により抗インフルエンザ薬を服用することで症状を緩和し、早い回復が期待できます。

すぐに医療機関を受診できない場合は、市販の解熱鎮痛薬も使用可能です。ただし、インフルエンザによる発熱時に服用できるのは有効成分としてアセトアミノフェンを含む解熱鎮痛薬に限定されます。一部のNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)はインフルエンザ脳炎・脳症などの重篤な合併症に関与しているおそれがあるためです。


6.発熱に備えて用意しておくべきものリスト

発熱などで体調がすぐれない時には、ちょっとした買い物も困難に。発熱した時にあると役に立つものを紹介します。ワクチン接種前はもちろん、日頃から備えておくと安心です。発熱した時に慌てないよう、ぜひ参考にして準備してください。

食料品は一週間分を目安に

発熱で体がつらい時は体を休めることが優先です。料理をするのは熱が下がってからにしましょう。レトルトのおかゆやパックごはんなどを用意しておくと、レンジや湯せんで温めるだけですぐに食べられます。同じ味に飽きないよう、ふりかけなどを用意しておくのもおすすめです。

また、経口補水液やスポーツドリンクなどのペットボトルも多めに用意しておきましょう。ペットボトルに付けられるストロー付きキャップがあれば、体を起こせない時でも楽に水分補給ができます。

体温計、衣類、日用品など

発熱時は汗をかきます。すぐに着替えられるよう、着脱しやすい下着やパジャマなどを用意しておきましょう。シルエットがゆったりした衣服を準備しておくと、ワクチン接種後の副反応による腫れや腕が上がらない時にも着替えやすいのでより安心です。

体温計のほか、トイレットペーパーやティッシュペーパー、ごみ袋など、生活必需品も日頃から少し多めにストックしておきましょう。

また緊急時に備えて、枕元にスマートフォンやブザーなどを用意しておくのもおすすめ。家族や友人にすぐに連絡できるようにしておくと、より安心して体を休められます。


7.発熱時の注意点

発熱時にやってはいけないことを紹介します。注意点を知って、正しく熱を下げるのが回復への近道です。

熱を無理に下げるのはNG

発熱は病原体と戦う免疫細胞たちの働きを強める効果もあります。熱を無理に下げると、免疫細胞たちの働きが鈍くなり、症状が悪化してしまうおそれも。そのため、熱が出たからと言ってすぐに下げようとするのはNGです。十分に休める場合は、しっかりと休養して回復を目指しましょう。

発熱で食事や睡眠が十分にとれていない場合は、無理せず解熱鎮痛薬を使いましょう。ただし、熱を早く下げたいからといって、既定の用量を超える服薬や、複数の解熱鎮痛薬を一度に服用することは絶対にやめてください。

入浴は短時間で済ませる

熱が下がりきっていない場合でも、体調が安定していれば、お風呂に入ること自体は問題ありません。ただし、42度以上のお湯に10分以上浸かると身体に負担がかかるため、なるべく入浴は短時間で済ませるようにしましょう。また、入浴後はすぐに暖かい衣類を着用したりホットドリンクを飲んだりして、湯冷めしてしまわないように注意してください。

熱が下がっても無理は禁物

熱が下がった直後は、体力が消耗・低下している状態です。無理をするとぶり返すおそれもあります。熱が下がったとしても、数日間は無理をせず、バランスの良い食事と十分な睡眠をとり、できるだけ安静にして過ごしましょう。


8.発熱したら安静に。解熱鎮痛薬は適切な選択を

発熱には免疫細胞を活発にする役割があるため、無理に熱を下げようとする必要はありませんが体力の消耗が激しい場合は無理せず解熱鎮痛薬の服用を検討しましょう。

年齢、病気の既往などによって適切な解熱鎮痛薬は異なるため、不安がある場合は医師や薬剤師に相談のうえ、症状や体質に合ったものを選んでください。