「酵素は健康に良い」とよく聞きますが、実際にどんな働きがあるのかよくわからない人も多いのではないでしょうか。
酵素には多くの種類があり、それぞれに食べ物の消化・吸収を助ける、代謝を活発化させるなどの決まった働きがあります。酵素の働きや健康維持との関係を知り、毎日の生活に役立てましょう。
1.酵素とは
酵素とは化学反応を促進する働きを持つ物質で、人間の体内で起こる消化、吸収、代謝といった働きを調節する役割があります。酵素には数多くの種類があり、それぞれ違った役割を担っています。
酵素は主にタンパク質で構成されています。タンパク質は熱によって変性するため、酵素も加熱によって働きが損なわれてしまうのが特徴です。そのほかにも、酵素が機能を発揮するためには様々な条件があります。
例えば、酵素のうち人や動物の体内で活動するものは、体温に近い35~40度の環境で最も活性化します。働きやすいpH(酸性・アルカリ性の指標)もそれぞれ異なり、多くの酵素は中性に近いpHで活発に働きますが、胃の中のように強い酸性を示す環境で活動できる酵素もあります。
2.酵素の種類と働き
人間の体内に存在するものだけで約5,000種類あると言われる酵素。その働きに着目すると以下の3つに分類できます。
- 消化酵素
- 代謝酵素
- 食物酵素
消化酵素と代謝酵素は体内で生成され、食物酵素は食べ物から摂取する点が大きな違いです。ここではそれぞれの特徴について詳しく見てみましょう。
消化酵素
消化酵素は食べたものが消化器官でスムーズに吸収されるよう、小さな分子に分解する役割があります。消化酵素は種類によって分解する対象が異なり、主に以下の3つがよく知られています。
- アミラーゼ
- プロテアーゼ
- リパーゼ
唾液に含まれるアミラーゼは、ご飯やパンなどの炭水化物に含まれるデンプンを分解します。
胃で分泌されるプロテアーゼには、タンパク質をアミノ酸に分解する働きがあります。リパーゼは脂肪を脂肪酸とグリセロールに分解する消化酵素であり、十二指腸や小腸、膵臓で分泌される点が特徴です。
代謝酵素
消化器官で吸収された栄養素は、全身へ運ばれ、様々な器官で利用されます。この時、体内で起こる化学反応を促進し、吸収された栄養素からエネルギーや体に必要な物質を生成する役割を担うのが代謝酵素です。
代謝酵素の働きは、以下をはじめ、すべての生命活動に欠かせません。
- 新陳代謝
- 運動や呼吸
- 血液の循環
- 免疫力の維持
- 老廃物の排出
- 肌のターンオーバー
食物酵素
食べ物に含まれる食物酵素には、消化酵素による分解をサポートする役割があります。以下は食物酵素を多く含む食べ物の代表例です。
【タンパク質を分解するプロテアーゼ】
- 玉ねぎ
- 納豆
- りんご
- キウイ
- パイナップル など
【炭水化物を分解するアミラーゼ】
- 大根
- にんじん
- ブロッコリー
- かぼちゃ
- パプリカ など
【脂肪を分解するリパーゼ】
- みそ
- 漬物
- アボカド
- ほうれん草
- 大根 など
このように、食物酵素は野菜や果物、発酵食品などに多く含まれています。ただし熱に弱いため、基本的にはサラダなど、火を通さない調理法で食べるのがおすすめです。
3.酵素と健康維持の関係
酵素によって、身体にはどのような影響があるのでしょうか。ここでは酵素と健康維持の関係性について詳しく見てみましょう。
生命活動を維持する
消化や代謝には酵素の働きが不可欠ですが、人間の体内で一日に作られる酵素の量には限りがあります。
暴飲暴食、過度な飲酒、喫煙、無理な運動のダメージなどから回復を図るために多くの酵素が使われると、そのほかの場所で働く酵素が減ってしまいます。そのため、体内の酵素のバランスを正常に保つために、食事や運動など生活のバランスも崩れないように、規則的な生活を送ることが重要です。
腸内環境を整える
酵素は体内の老廃物や毒素を排出する反応にも関与しており、酵素の働きを正常に保つことが腸内環境を整えることに役立ちます。便秘や肌荒れの改善など嬉しい影響も期待できるでしょう。
腸内環境を整えるためには、体内の消化酵素をサポートする食物酵素を積極的に摂るのもおすすめです。特に発酵食品に含まれている「酵母菌」は、腸内での消化・分解を助ける働きがあります。腸内環境をよくするために、食事も工夫してみましょう。
新陳代謝を高める
新陳代謝とは、古い細胞が新しい細胞に入れ替わる仕組みです。新陳代謝を繰り返すことで、私たちは体の機能や健康を維持しています。
体内では、代謝酵素の働きによって新陳代謝がスムーズに行われ、老廃物や疲労物質などの排出をサポートしています。代謝酵素が働かず、新陳代謝がうまくいかないと、肌荒れを起こしたり疲れやすくなったりすることも考えられます。
4.酵素の働きを高めるために心がけたいこと
酵素の働きは生活習慣によっても影響を受ける場合があります。ここでは酵素の効果を高めるために心がけたいことについて見てみましょう。
食事は腹八分目を意識する
胃腸が消化・吸収を行うには多くの酵素が必要です。食べすぎると酵素の生成が間に合わず、食べ物を十分に消化・吸収できなくなります。また、食べすぎで胃腸が疲れてしまい、食物酵素を含んだ食べ物を摂取しても機能しなくなってしまうのです。
食事の際は満腹になるまで食べるのは控えて、腹八分目を心がけることが大切です。主食である炭水化物の割合を減らしつつ、食物酵素が豊富に含まれている生野菜・果物を多く取り入れて食事バランスを調整しましょう。
ストレスを溜めすぎない
ストレスを溜めすぎると体のバランスを整える自律神経が乱れ、酵素が正常に働かなくなります。自律神経が乱れると、倦怠感や不眠、めまいなどの体の不調につながり、さらなる悪循環を生むリスクも。
仲の良い友人に悩みを相談したり、趣味に没頭したりなど、自分なりのストレス解消法を持っておくと良いでしょう。
5.酵素の働きを理解して健康な体を作ろう
酵素は食べ物の消化・吸収を助けるだけでなく、生命維持に必要な働きもサポートしている大切な存在です。生活習慣が乱れて酵素の働きが弱まると、身体に悪影響をおよぼす恐れもあります。
酵素の働きを活発にして健康な毎日を送るためにも、生活習慣を整え、食物酵素を含む食材摂取に積極的に取り組みましょう。